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熱帯綺羅

2016年4月18日

消えゆくブギスのランドマーク 「ロチョー・センター」

移転するにも賃料が高い、住民たちの苦悩

ロチョー・センターの取り壊しが発表されたのは2011年。HDBによると、かつて同施設には180以上の店舗が入居していましたが、現在は70ほどにまで減っているようです。敷地内を歩くと、シャッターの閉まった店舗が多く、すでに移転したところも多いことが張り紙からも分かります。1階のフードコートには、まだ営業中の店もたくさんありますが、2階に上がると一気に人気がなくなります。取り壊す直前ということもあってか、壁の塗装が剥がれているなど建物の傷みも目立ちます。
取り壊しに伴い、居住区に住んでいる人の多くは政府に充てがわれたカランの公営住宅に引っ越すことになり、6月頃にかけてここを立ち退く人はさらに増えそうです。ロチョー・センターに3年住んでいるというジョナサンさんも、6~7月にカランへ引っ越す予定といいます。ただ、「職場に近くて便利なので、ここに引っ越してきた。住み慣れたロチョー・センターを離れるのはやはり惜しい」と残念さを隠せない様子です。

 

ジョナサンさんによると、カランとここではあまり家賃は変わらないとのこと。さらに深刻なのは団地に住む人たちより、ここで店を構える人たちなのかもしれません。なぜなら、店の移転先を自分で探さなければならないからです。またロチョー・センターのオフィス賃料はシンガポール中心部にありながら他所に比べて低く、どこに移転するかは残った店にとって悩ましい問題のようです。「7月に立ち退く予定だが、まだ移転先は決まっていない」と、1階で電気店を10年以上経営してきたというリーさん。「移転しようにも、どこも賃料がここよりずっと高い。しかし取り壊しが決まった以上、私達にはどうすることもできない」と淡々と話します。2階で携帯用品ショップを営むタンさんによると、移転にあたり1店舗あたり3万Sドルの補助金が支払われるそうです。それでも、賃料の高いシンガポールでは不十分ではないかとタンさんは話します。

 

街の発展のために古い建物を壊し、住民が立ち退きを求められる、日本でもある光景ですが、住民へのケアも大切と改めて感じさせられます。シンガポールの経済成長や街の発展を「光」とするならば、ロチョー・センターにはその「影」の部分が表れていると言えるのかもしれません。

 

 

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ロチョー・センターから見たブギス。複合施設「DUO」の建設工事が進んでいる。完工は2017年の予定。
1 Rochor Rd、Singapore 180001

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.300(2016年4月18日発行)」に掲載されたものです。
取材・写真:佐伯 英良

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