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熱帯綺羅

2010年4月5日

木の妖精を生み出す自然の宝石「Tree Nymph Butterfly」

金色をベースに黒い小さな斑点が入った、細長いアクセサリーのようなものがいくつも並んでぶら下がっているのは、シンガポール動物園の展示室にあったショーケースの中。光沢のある美しい金色は、見る角度によっても微妙に変化します。初めて目にした時は、なぜこんなものが動物園に置いてあるのだろうと場違いな感じさえ抱きましたが、その艶やかな色合いにしばし見入ってしまいました。

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美しい金色に輝くオオゴマダラのさなぎ

 

 

美しく金色に輝いていたものの正体は実は蝶のさなぎ。英語では「木の妖精(Tree Nymph)」という名前が付いている蝶です。東南アジアに広く分布し、日本でも沖縄など南西諸島の多くの島に生息しています。和名は「オオゴマダラ」で、一説によるとさなぎのまだら模様から付いたそうです。

オオゴマダラは分布地域でほぼ1年中見られます。産卵から孵化までは約3日。幼虫は、ホウライイケマ(ガガイモ科)やホウライカガミ(キョウチクトウ科)の葉を食べて育ちます。いずれも植物毒といわれる植物性アルカロイドを含み、幼虫は体内にその毒を溜め込んでいるので他の動物から捕食されることはありません。幼虫の体は全体に白と黒のしま模様が入っていて、白地の部分に鮮やかな赤色の丸い紋が付いています。このちょっと毒々しい色の組み合わせが、毒を持っていることを周囲に知らせる警告色の役割も果たしているそうです。

幼虫がさなぎになるまでは約3週間。さなぎになってからは約2~3週間で羽化します。煌びやかな色をしたさなぎとは対照的に、成蝶は意外にもモノトーン。白地に黒の美しい紋様が入っています。さらに驚いたのは、成蝶が抜け出した後のさなぎの殻の色。透き通っていてほぼ無色に近いのです。

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シンガポール動物園内の展示コーナー「FRAGILE FOREST」への入り口。

 

金色の輝きの正体――構造色

プラスチックのような透き通った殻、その中に入っているのは白と黒の二色のみを持つ蝶。この組み合わせでなぜあの金色の輝きが生まれるのか――その謎を解く鍵は、構造色という発色現象にあります。

色素を持つ物体は、例えば赤いものだと赤の光以外を吸収して赤の光のみを反射するので、人間の目には赤に見えます。黒の色素を持つ物体はすべての光を吸収し、人間の目には黒に見えます。構造色の場合、物体自体は色素を持っていません。光の干渉によって光が強められたり弱められたり、散乱したりして起きます。

構造色が見られる例の一つがシャボン玉。透明な薄い膜の上面と下面で反射する光が互いに干渉し、様々な色が浮かび上がります。また、薄い膜を幾重にも重ねたような構造による光の干渉では、人間の目には金属のような光沢として映ります。オオゴマダラのさなぎが金色に輝いて見えるのも、同じ仕組みなのだそうです。

ほかに構造色が見られるのは、アワビの殻の内側やクジャクの羽、ネオンテトラなど。身近なところではCDやDVDディスクの記録面でも見られます。構造色を人工的に創り出すための様々な研究も進められており、美しい光沢の衣類や、包装紙、化粧品などに既に実用化されています。

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さなぎから羽化したばかりのオオゴマダラの成蝶。しばしの間さなぎにつかまって、体液を送り込みながら徐々に羽を広げる。

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