2011年1月17日
都会のオアシス、マリーナ・バラージ
2008年に完成したマリーナ・バラージ(Marina Barrage)は、街中にある巨大なマリーナ貯水池の堰で、シンガポール・ハーバーからマリーナ・ベイ・サンズとシンガポールフライヤーの間を抜けて、マラッカ海峡へと繋がる玄関口にあります。20年前にリー・クワンユー上級相(現顧問相)が提唱したビジョンを具現化したもので、カラン川やシンガポール川などへ流れ込む淡水を集め、飲料水や工業用水として利用します。シンガポール川河口からお馴染みのマーライオンの目の前に広がるシンガポール・ハーバー、今や塩水でなく淡水であることは、案外知られていないかもしれません。
市街地のこの巨大な貯水池は、10,000ヘクタールの面積があり、シンガポールの国土の約6分の1もの大きさがあります。貯水池として全体の需要量の10%にあたる水を供給する事はもちろん、マリーナ・バラージは、チャイナタウンやシェントンウェイなどの土地の高さが低い地域への洪水を防ぐためのダムとして水位をコントロールしてます。また、今年完成予定のマリーナ・ベイのガーデン・バイ・ザ・ベイ・プロジェクトの一環として、市民の憩いの場を提供する役割も担っています。
シンガポールの水事情
東南アジアでは珍しく、水道の蛇口から出る水を飲料水として使用できる上水システムを持つシンガポール。一方で、国土の事情からシンガポールの水資源が乏しいため、一般家庭や各工場などに供給される水は、その供給源のおよそ半分を隣国マレーシアからの輸入に頼ってきました。これまで水の購入価格の値上げ交渉などに悩まされたことからも、水供給契約の期限切れを2011年と2061年に迎えるにあたり、自国での安定した水資源確保を重要な国策の一つと掲げ、あらゆる取り組みがなされてきました。
現在、シンガポールでは、水の輸入、17カ所の国内の貯水池、下廃水再利用のプラントで再生される超純水「ニューウォーター」、海水から真水を生成する淡水化プラントによる4つの水の供給源があります。2061年までには「ニューウォーター」で国内需要量の50%を、淡水化プラントからの供給で30%を賄う事を目指しています。それに貯水池からの水の供給が加われば、ほぼ自給に近い形が実現する訳です。