2013年6月3日
ピューターの鈍色の輝きを生み出すマイスターたち
シンガポールの土産物店を訪れると、味わい深い鈍色(にびいろ)の輝きを放つピューターのゴブレットや飾り皿、置き物などをよく目にします。ピューターとはスズ(錫)を主成分とする合金。2000年以上前の古代ローマや中国でもピューター製品が作られ、その優美な輝きが愛でられていました。
数十年前にはシンガポールにもピューター工場がいくつもありました。その時代を知る、今やシンガポールで唯一のピューター工場を持つ地元企業がフェニックス・ピューター(Phoenix Pewter Pte Ltd)です。
ピューター製品へのニーズの変遷
フェニックス・ピューターが設立されたのは1980年。その頃シンガポールでピューター製品の買い手は主に外国人観光客でした。同社のスティーブン・タンさんによると、1980年代から1990年代にかけては特に日本人の団体観光客に人気でした。「1人が購入すると、みな同じものを求めるので、特定の商品がまとめて売れてしまう。店から補充の注文が入って慌てて届けに行ったこともよくありました。飾り皿や置き物などが人気でした」。
その後1990年代後半から2000年代の主な買い手は中国人の団体観光客。「彼らも、1人が購入すると、やはりみなが購入しようとするのですが、他の人が選んだものと別のものを求めていました。置き物などより実用的なマグカップなどが人気でした」。
最近では、国籍を問わずさまざまな国々から訪れる観光客がピューター製品を購入していますが、その数はピーク時に比べるとかなり少なくなっているようです。