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EP厳格化!採用相談室

2018年8月28日

経営・組織を見直す機会に

今回は、EPの基準変更を受けて、また今後の変更に対してどういう思考プロセスで考えるべきなのか、網羅性がある「意思決定ツリー」を使ってご紹介します。

 

 

Point1
誰が影響を受けるのか

EP基準変更に際して、まずは影響を受ける方々について把握をすることが大切です。影響を受ける方は、①EP保持者、②シンガポール人、PRです。

 

1 EP保持者(駐在員、現地採用)
現在EPで勤務中の方は、現在の条件が新基準を満たしておらず、EPが更新できないリスク、また更新可能な場合であっても、社内の外国人比率が高いなどの理由からEP更新後の有効期間が短くなるケースがあります。また新任駐在員のEPが取得できないなどのケースもあります。

 

2 シンガポール人、PR
一見今回の基準変更の影響が無いように感じられるシンガポール人、PRではありますが、心理的な影響を考慮する必要があります。EP基準の厳格化に伴い、外国人の給料がアップすることが考えられるため、「同じ仕事内容に対して外国人(現地採用)の方が給料が高い」などの不満が出ることが考えられます。
いずれのケースにしても、新たなEP基準の下で従来の人員数を維持するためには、シンガポール法人における人件費上昇は避けられない状況です。

 

Point1
EP基準の変更にどう対応するか

今後、避けられない人件費上昇に企業としてどう対応をすれば良いのでしょうか。左ページの意思決定ツリーのステップに沿ってみていきましょう。

 

Q1. EP社員のEPを更新できるか?
EP更新に伴うコストアップに会社が対応できる場合は、新基準を満たすように給料をアップさせてEPを更新するという結論になります。または、S-Pass枠があれば、S-Passを利用して雇用を継続するという手段もあります。一方で、更新をしない、つまり現在のEP社員を解雇する方向となった場合には、人員が1名または数名減るわけですので代替案を検討する必要があります。

 

Q2. 解決策は「採用」か?
1名または数名の人員が減った分を埋め合わせる手段として、新たな基準下でも既存の給与規定の条件で折り合う社員を採用するという方向があります。もし採用せずに減少した社員数でビジネスを続ける場合には、社員一人ひとりの「生産性向上」、駐在員から現地社員へ置き換えコストを圧縮する「現地化」、またシンガポールでの「事業縮小」やオペレーション機能の「一部海外移転」などが経営の選択肢となります。

 

Q3. 「日本語」は必要か?
採用が解決策となる場合は、キーとなるのは「日本語が必要かどうか」という問いです。必要ない場合は、EP社員が担当していたポジションをシンガポール人社員で埋めることが有力な選択肢となります。一方で、本社との連携や日本語のシステム入力、日系顧客の対応などから「日本語」が必須となるポジションもあります。その際は、いくつかの採用候補が考えられます。

 

1つ目は、同じEPの採用ですが、より高学歴かつ年齢が低い社員へ代替する方法です。この場合は、以前の方よりも低い金額でEPを取得し採用することができます。

 

2つ目は、会社にあるS-Passを活用して新たな採用をする方法です。この選択肢の場合は、既存のEP社員をS-Passへ切替える方法と比較して検討する必要があります。

 

3つ目は、DP保持者の採用です。シンガポールは帯同者の就労が認められる珍しい国でもあります。帯同された方の任期等で限られた期間での就労となる場合があり得ますが、就職希望者の意欲や技能も高く、給料の最低基準もないため、PRに次ぎ就労に強いビザという認識です。

 

4つ目は、日本人PR保持者の採用です。シンガポールでの生活が長く、今後も長期でシンガポールに滞在する可能性が高い方々です。ただし、最近日本人の新規PR取得は難しいと言われており、引く手あまたの売り手市場であることは採用の際に留意する必要があります。

 

最後に、日本語ができるシンガポール人の採用という手段もあります。昨今は日本語学習への人気が低下傾向にあるものの、一定数日本語をビジネスで使用したい方もいます。

 

今回のまとめ

ルール変更への対策を講じるためには、まずはすべての選択肢を洗い出し、意思決定の判断基準を明確にすることが大切です。今回の意思決定ツリーは、今後のEP基準変更の際にも応用して使用できるフレームワークです。今後もルール改定の際には、こちらのツリーを社内や本社とのディスカッションに活用いただければと思います。また、より詳細の対策方法や他社の事例については、専門のコンサルタントまで是非お問い合わせください。

 


お話を伺ったのは…
JAC Recruitment Pte Ltd
チームマネージャー
松本 勇太さん

 

大学卒業後、人事系コンサルティングファームに入社。
採用・組織開発コンサルティングに従事。その後、外資系企業にて人事を経験。2015年に来星しJACリクルートメントへ入社。
製造業専任のリクルートメントコンサルタントとして活躍しながら、チームマネージャーとして部下の管理・指導も行う。
現在、シンガポール国立大のパートタイムMBAに通学中。

 

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.337(2018年9月1日発行)」に掲載されたものです。

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