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2010年9月6日

海外拠点立ち上げを通じて育つ人材

Tama Global Investments Pte Ltd President and CEO 堀場 朋愛 業種:投資

弊社はタマホーム初の海外拠点として約1年半前にシンガポールに設立されました。東南アジアや南西アジアの株式や不動産等への投資を行うことを目的としている為、現在までそれらに関する調査を行って来て居ります。具体的な販売物があったり製造したりする業務ではなく、これから具体的に我がグループが何をすべきかの調査や戦略策定が主業務でした。よって抽象的な指示が多くなりがちで、且つ地味で面倒な資料作成が業務の大半でした。

 

私自身はアジアに通算で約10年駐在しておりますが、毎回その企業にとって海外初拠点を立ち上げるという役目を負って来ました。そこで感じていることを記します。

 

拠点自体ができて間もない時期や海外で何をやるかを親会社自体が模索している時期は、現地にいる人間は全ての事に於いて「仕組みを理解する、仕組みを作り上げる」能力が求められていると思われます。対象としては先ず親会社それ自体について、そして投資対象地域及び国家、都市、官庁、業界や商慣習、プレイヤー、投資対象物の需給、法制度などでしょう。

 

はじめに採用についてですが、私はあまり前職を重要視していません。この段階では事業の専門家よりもキャラクターや才能の方を重視しています。我社の管轄している国々は、統計が信用できる・制度が確立しているケースはあまり無いため、地べたを這った収集活動に勤しまなければなりません。よって泥臭い業務が遂行でき且つ情報を手際良く整理出来る人間、継続的にコミュニケーションを取れる人間を採用しています。採用後は半年を目安に業務遂行が独りで出来るようになることを目指します。勉強する書籍やサイト、関係者なども特に具体的に提示しません。大枠を伝えるだけです。見つけ出すこと、選択することも最終的に何を求められているかを理解していないと出来ないからです。シンガポール拠点のミッションは自分で仕組みを理解し、仕組みを作り上げることにありますから大枠以外は指示を出しません。基本的には報告や対話の中で人材育成をしています。ですから対話時間は充分に設けるように心掛けています。

 

しばしば「お前はまだまだだな」とか「10年たったら一人前」などとおっしゃる上司の方々もいらっしゃいますが、それは自分の指導方法を否定していることに他ならないのではないかと思われます。自分よりも上の人材を短期間で育成できれば上司として優秀なのではないでしょうか? 私自身はなかなかできないでおりますが。

 

期間を短縮する最良策は、「現場に出す。出来るだけ付き添わない。考えなければ、行動しなければならない状況を作り出す。でも責任は上司が取る。」ではないかと考えています。

 

私も30歳の時、「香港に住んで、フォーブズに出るような大金持ちを見つけて、数十億円の日本のビルを売って。」というミッションを課されました。不動産の不の字も知りませんでした。事前研修も何もありませんでした。毎日香港の埠頭にひとりぼっちで行って、途方に暮れた遠い昔を思い出します。とても辛い日々でしたが、それが良かったような気がしています。

 

「もう二度とゴメンだ!」と思ったにも拘らず、同じ事ばかり繰り返しているのもまた人生なのでしょうか?

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.174(2010年09月06日発行)」に掲載されたものです。

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