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2010年9月20日

チャレンジする勇気のある人材が欲しい

SANYO DENKI SINGAPORE PTE.LTD. General Manager 辻村 哲也 業種:電気機器メーカー

私がシンガポールに赴任して無事5年が経過しました。事務所を立ち上げ、仕事を共にしてきたローカルの皆さんとのコミュニケーションの中で、皆さんの仕事に対する考え方、姿勢、そして行動力について感じたこと、加えて私自身が進歩しない限り組織が前に進まなかったことなども含め、求める人材について述べてみたいと思います。

1.「まず指導者が教え、やってみせる」

同僚同士で仲間を助けているか、また仲間から助けられているか、決して自分だけ良ければOKというミーイズムになっていないか。

事務所立ち上げ当初、組織が小さかったため、一人でも自分勝手な人間がいると雰囲気も壊れ、組織も安定せず、営業活動が出来ないと考え、特にこの点について気を配っていました。一人のローカル営業の方にきちんと製品やサービスのことを教え込み、その後は仲間同士学びあってもらい、営業活動に励んで欲しいと考えていました。

 

ただ実際にはそうは行かず、シンガポールでは「同僚は競争相手」という空気が非常に強く、どちらかというと手に入れた知識・情報は、共有するより同僚と差をつける「自分の武器」になっていることに気付きました。

 

このままでは「営業力の底辺」を上げられず、本社から成績不振を追求されるだけだと思い(笑)、マンツーマンで各人に教え込みました。技術的な内容で英語できちんと伝えることが難しい場合、教えたいことを絵で表現したり、製品の実物を見せながら教え込みました。そのため今では、たくさんの図解資料と製品のガラクタがオフィスに溢れています。

 

顧客訪問時には、製品・サービスの売り込み方を何度もローカル営業の皆さんの前でやって見せました。精神的にも肉体的にもかなり磨り減りましたが、一番効果的な方法でした。

 

シンガポールとか日本とか関係なく、何事も指導者が「教えて、やって見せて、やらせてみる」ということの大切さを改めて実感しました。最善策をその都度考え、一つずつ乗り越え、ローカルの皆さんの期待に応えることの大切さを知りました。今ではその時の積み重ねが「セールスパーソン教育資料」となっています。

2.「責任はいつも自分の中にある」という考え方

弊社の得意技の中に、「顧客の要求を忠実に形にする」というものがあります。ただ、シンガポール市場では、「使い易い製品で、安価で、いかに早く入手出来るか」というサービスに重きを置く傾向があり、この得意技がなかなか生かせない環境にあります。

 

お客様の側に「作り込む」という文化に乏しく、自社オリジナルを「創り出す」という気概があまり感じられないため、未だに営業活動の中で煮え切らない部分があります。

 

事務所立ち上げ当初は、自分たちの得意技を売り込んでいましたが、無意味であるとわかり、ローカルの皆さんにも説教され(笑)、徐々に営業の仕組みを変えて行きました。

 

正直いうと屈辱感、無力感というか、得意技が使えない制約が焦りを助長しました。

 

ただ、勇気を持って仕組みを変えたことにより不思議と売れるようになりました。これまでの自分の経験だけではシンガポールでやっていけないと悟った瞬間でした。

 

売れないことをローカルの皆さんの責任にしていた自分と、売れないのは得意技を無理に顧客に押し付けようとする会社側の責任だというローカルの皆さんとの「隔たり」が、営業成績の向上になかなか繋がらなかったと気付きました。

 

「いっしょになって立ち向かう、打ち勝つ」という気概がお互いに欠け、それぞれが「自己保身」になっていたのだと思います。

 

経験者はあらゆる場面で常に重要な存在となりますが、置かれる環境が変わった時、一度ギアをニュートラルにして、状況に合わせてギアをシフトしないと組織が前には進まないということを学びました。環境に適応し、自分が進歩しない限り、ローカルの皆さんとの成長はあり得ず、ローカルの皆さんと一緒に学習して行くことが、新しい市場を開拓して行く上で大切なことだと分かりました。

(次回に続く)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.175(2010年09月20日発行)」に掲載されたものです。

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