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Employer's Voice

2010年10月4日

チャレンジする勇気のある人材が欲しい(2)

SANYO DENKI SINGAPORE PTE.LTD. General Manager 辻村 哲也 業種:電気機器メーカー

前回の「1.まず指導者が教え、やってみる」、「2.『責任はいつも自分の中にある』という考え方」に続いてさらに2点述べたいと思います。

3.「正解主義」はもうたくさん。とにかくやってみる

社会人になってから、また海外に赴任してからさらに痛烈に感じることは、「正解主義」は全く不要だということです。基本的に私も受験戦争を戦った「兵隊さん」ではありますが、特にシンガポールの皆さんは、敗者復活戦のない環境の中で熾烈な競争をしていると聞いています。失敗したら自分を笑い飛ばし、面子を捨て失敗から学び取る。それが「本物の力」になると考えてもらえたら凄く仕事がやり易くなるのではと思うことが良くあります。このように考えられれば何事にも「参戦する勇気」が湧いてくると思います。本人に技術や才能があるなしではなく、もっと単純な話で、自ら行動して「オーダーメイドの服を作れる能力」が養えると思います。

 

「痛い・苦しい・辛い」から学ぶ「本物の力」と、そこから生まれる「柔軟性」は、これからの世の中必須だと思います。行動しなければ結果は出ない。失敗を恐れたら行動が取れないという「危うさ」に対してもっと危機感を持つべきだと思います。「笑われる」「失敗する」は、最高の効率学習であると思います。わざと失敗しろとは言いませんが、仮説(=とりあえず)でまず動き、そして間違ったかもしれない自分を認めたくないという「自己保身」を捨て、失敗を負けと決め付けず、それを成長へのエネルギーに換える。

 

自己保身は会社にとってもマイナスであり、失敗したらそれを揉み消すのではなく、素直に認めてアウトプットし、検証・修正し前へ進む。言われたまま「正解」だけやれば良い、自分の頭で考えない、といった状態では能力が伸びないので、何事も長続きせず、思考に「深み」がなくなってしまいます。ただ、このような「正解主義」がはびこっている状況に対し、指導者も天を仰ぐのではなく、失敗しても次があるんだ、何度でもチャレンジ出来る、というメッセージを送る努力がもっと必要な面もあると思います。

 

失敗をマイナス面として問い詰めず、なぜ失敗したのかという「理由」を良く考えてもらい、それは「誰の課題」なのか、その失敗は「もう一度チャレンジして克服しなければならない課題」で、「あなたはどうしたいのか」という点でサポートする必要があると思います。ただ、あまり思い詰められても困るので、「ゲーム感覚」を忘れて欲しくないとも思っています。

4.チャレンジ精神が未来を「創る」

シンガポールは、リー・クアンユー氏を筆頭に、主にイギリスで教育を受けた「エリート層により作り上げられた国である」と何かの本で読みました。また、彼は学力主義者(学歴=能力)で、過去にシンガポールの皆さんに以下のような発言をしたことがあると書いてありました。「残酷なことを言いましょう。人間は才能のある者とない者とに分かれます。我々の仕事は、才能のあるなしをすばやく見極めることです。才能のない人間を訓練するのは、私の時間の無駄であり、その人の時間の無駄でもある。」

 

確かにマレーシアから独立して四面楚歌となり、国づくりが急務で、一日も早く国が豊かになるために10歳から始まる「教育選別制度」を作り上げたのだろうと思います。ただこの発言のことを知って、日ごろの仕事の中でも感じていた、シンガポールの皆さんにはどこか「諦めムード」があること、転職の多さを経験の豊さと決め付けているところがなんとなく頷けました。もし敗者復活戦という寛容さを教育の仕組みに取り入れられれば、蔓延している諦観が払拭され、自分で考える余裕と力が生まれて、チャレンジ精神を醸成して行くことが出来るのではないかと思います。チャレンジしたことを辛くても続ける勇気、続ける事によっていずれそこから出口が見えてくるというプロセスの大切さを知ってもらえれば、物事の思考に「深さ」が増し、「情熱や感動」に繋がるのではないかと思うのです。

 

これからのシンガポールは、政府の力だけではなく、国民の皆さんもそれぞれ自分の意志を持って、政府と一緒に後世の未来のことを考えて行動し、成長するチャンスはいつでもあって、チャレンジは未来を切り開く原動力であると言える方々が増えるように、教育の仕組みにも変化が求められる時期ではないかと思います。

 

シンガポールで会社を運営させていただいている者として、また子供を持つ親として、微力ながらもチャレンジ精神の大切さを周りに訴え、行動で示して行きたいと思っております。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.176(2010年10月04日発行)」に掲載されたものです。

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