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Employer's Voice

2010年11月15日

シンガポール:2種類の社員

Kelvin Chia Partnership Corporate Affairs Director 丸茂 修 業種:法律事務所

シンガポールの2種類の社員に関しての話をしてみたいと思います。採用の一助になればと考えます。

 

シンガポールには肉食系と草食系社員がおります。これを念頭に入れておくと雇用計画作成また社員採用、勤務中、退職・解雇時に役に立つと思います。

 

まず肉食系とは?シンガポールには元来大企業はなく、仕事をする場合は大半が自営業でした。自営業で社長になる為には家業を継承する以外は自営業の社長の下で事業経営術、各種業務の実務を勉強するのが一般の流れでした。この思考形態は現在にも引き継がれています。現在はかなりの外資、地場の大企業も存在しますが、内部の出世階段を一段ずつ登って行くという考えは少数派で、部署ごとに経験実績を積み上げて企業を渡り歩き、出世して行くのが一般的です。

 

シンガポールの教育制度は専門家(スペシャリスト)の養成を目的としています。プロフェッショナル(医者、弁護士、会計士他)に限らず、金融、人事に至るまでそれに関する教育機関が完備され、その道の専門家を輩出しています。専門家の手足となる秘書も専門教育機関にて養成されています。専門家の皆さんは、最終的には当該企業で当該業務を修得するのを目的としていて、それも何年でと決めています。

 

彼らの多くはある部署で何年か実務を経験し、他の大企業へステップアップしていきます。また、自分がかつて在籍した企業へ上の役職にて戻るという例もかなりあります。様々な業務を経験するといっても同じ業界となる例が大半であるからでしょう。こういう事があるためか、退職も友好的な退職が多いようです。また、逆にこの時点で独立し、自営業で社長の道に入って行く者もいます。

 

特に責任ある役職を担当するシンガポール人社員を雇用する場合、どの業務を修得目的に応募して来ているか、またどの位の期間を勤務期間(修得期間)に想定しているかを押さえる事が肝要です。採用が決定した場合、新入社員は秘書およびアシスタントを使い業務を如才なく処理していきます。シンガポールは資格社会であるために勤務時間外や週末には学校に通い、資格取得に精を出している社員も多くいます。

 

肉食系社員に対しては、日本人上司は目標をはっきりさせて上手に使いこなす必要があります。こういう社員に対してノミニケーションで誘い出してもあまり効果がありません。また、こういう目的意識を持った社員は簡単に誘いを断り、上司との関係を難しくする場合があります。有給も学校との関係で取得しているケースも多いのですが、業務に支障のない限り申請通りに承認するのが地場企業の対応策です。業務を一応修得したとなると次のステップアップとして退職を通知して来ます。通常の雇用契約書では退職に際しての通知期間は1~3ヵ月です。その間に当該社員の後任を探し、採用する事になります。人の雇用が流動化しているシンガポール社会では後任を探すのは難しい事ではありません。この社員でなければ駄目と拘る必要はないのです。いざ後任者が決まってみると、意外にも前任者より良い点が多く安心したという経験をお持ちの人事担当者は多いはずです。

 

これに対して草食系は、出世欲はそこそこでより安定した、長期間勤務の出来る職場を求めています。これも外資、地場ともに安定した大企業が増えてゆっくりと出世の階段を登って行ける環境が整って来たのと、この国の特徴である家族生活第一の生活形態とマッチしているためです。シンガポール人は待つ事に意外と寛容な国民。皆さんももうお気づきと思いますが、MRTでの電車への乗降時の混乱は例外として、現地スーパーマーケットやデパートの支払いレジではよく長蛇の列となっていても、文句を言う人もなく皆黙々と順番が来るのを待っています。また、道路交差点での右折・左折も意外と静かに信号待ちをしています。草食系社員は静かに如才なく仕事をこなします。何かあまり考えていない様にも見えるのですが、危機に際しては漏れなく必要業務を遂行します。但し一歩引いているという印象は拭えず、また一歩先に出ようという意欲は弱い。発言も2番目となります。日系企業の文化にはなじみやすく、日本人上司からすると使いやすい社員になりますが、もう少し積極性が欲しいと言う印象でしょうか。日系企業で長期間勤務しているシンガポール人社員は、しぐさも日本人に似て来て後ろから見ると日本人と見間違う程です。

 

肉食系か草食系かの選択基準は募集しているポジションがどの様な業界のどの様な職種か、またどの様な上司とグループに籍を置くかを元に検討せねばならないでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.179(2010年11月15日発行)」に掲載されたものです。

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