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2011年3月7日

“ジョブ ホッピング” と “生え抜き”

TAC-TOKYO AIRCARGO (SIN) PTE LTD マネージングダイレクター 森 知也 業種:国際貨物輸送業

はじめに弊社のご紹介を簡単にさせていただきます。

 

業種は国際貨物輸送業であり一般的にはフォワーダーと呼ばれています。お客様の貨物をお預かりし、輸出の取扱い、また各国から輸入されてくる貨物の取扱いをしている会社です。私が入社してから変わらず常に心掛けていることは「お客様の貿易の手段として私どもの業種が存在し、その貿易のお手伝いをさせていただいている」ということです。輸送形態は主に航空と船です。特に弊社の場合は社名にAIRCARGOと入っておりますので航空便のみ取扱いをしているものと思われることが多々ありますが、実際には船便も取扱っています。また業務内容は国際輸送のみに限らず、付随する国内輸送、倉庫保管、3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)など多岐に渡ります。

 

2008年11月にシンガポールに着任する前は、私は大阪市内の営業所に勤務しておりました。今回が初めての海外赴任ということもあって、赴任前にはシンガポールがどういう国なのかインターネットで調べたことを思い出します。シンガポールはなんといっても多民族国家であり、それに伴い宗教も様々です。日本ではこのような環境を経験した事がありませんので「郷に入れば郷に従え」、まずは初めて体験するであろう様々なことを理解し慣れることが大事であり、またそれが職場での人間関係の形成や、ローカル企業も顧客に持つ弊社にとっては顧客との良好な関係の構築に繋がると考えました。

 

その他にシンガポールの特徴と言いますか、責任者になる立場から見たときに“ジョブ ホッピング”という言葉が目に入ってきました。IT分野など進化が目覚しい現代でこそ日本でも“ジョブ ホッピング”は知られるようになり認識されつつありますが、終身雇用および年功序列制度が一般的であった日本ではなかなか耳にしない言葉でしたし、まだ定着はしていません。

 

英国統治時代の名残なのでしょうか、シンガポールでは“ジョブ ホッピング”は一般的です。“ジョブ ホッピング”する人のことを“ジョブ ホッパー”と呼びますが、彼らはある会社で数年間働き、専門知識や技能を身につけたと判断すれば自分自身を高めることを目標に転職先を探し、それを繰り返します。より高い給料を目指し転職を繰り返していくのです。

 

ここで私が知っている“ジョブ ホッパー”の例をご紹介します。

 

私が彼の最初の訪問を受けたとき、彼はA社に勤務していました。その約半年後、転職したからといってB社の名刺を持って再訪問を受けたのですが驚くことに、その数ヵ月後は彼からC社の名刺を渡されたのです。B社とC社は同じエリア内にあり、まさに目と鼻の先です。当然、日常的にB社のスタッフと顔を合わすことになります。できれば前の職場のスタッフと顔を合わさなければならない状況を避けたいという心理が働くのが日本人的感覚かと思いますが、金銭面、能力面で自分自身の向上を目指す彼ら“ジョブ ホッパー”にとっては、そんなことは全く気にならないようです。この件は私の身近で実際に起こった出来事だけに感心するとともに大変勉強になりました。

 

それでは弊社の場合を見てみたいと思います。

 

弊社にはスタッフが10名おりますが全員が私が赴任する前から勤務しており、そのうち5名は勤続年数が10年以上になります。彼らは経験と専門知識が豊富ですので会社からの信頼も厚く、各セクションのマネージャーとして活躍しています。私どもの業務は国によってレギュレーションが異なることが多く、シンガポールも然りです。私も赴任直後には細かな部分で分からないことがありマネージャーに質問をしましたが、その都度、的確な答えが返ってきたことに安心感を覚えましたし、信頼へと繋がっていきました。また各マネージャーが担当しているお客様との間にも信頼関係ができています。これは会社にとっては非常に大切なことであり、財産です。会社としてはこの財産を大切にするべきです。会社を発展させていくときに一人の力では限界があります。やはり、どの業種においても言えることかと思いますが、人材は会社にとって重要であり、弊社の場合は良いお手本がいますので、アシスタントスタッフのレベルアップを図ること、また育てていくことが今後の課題です。

 

弊社に関して言えば“ジョブ ホッパー”の採用経験はありませんが、即戦力の“ジョブ ホッパー”の採用、または生え抜きを育てることのどちらにしましても、彼らのやる気が会社に良い影響を及ぼすことは間違いないと信じています。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.184(2011年03月07日発行)」に掲載されたものです。

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