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2011年6月20日

理想の組織を目指して

SHARP-ROXY SALES (SINGAPORE) PTE LTD ジェネラルマネージャー 鈴木健史 業種:製造業

シンガポールに赴任して、シンガポール島内および東南アジア地域各国代理店とのビジネスを職務とし、早いもので5年9ヵ月が経とうとしています。この間に学んだ「理想の組織を作るまでの難しさ」について述べさせて頂きたいと思います。

 

現在、約60名の営業部隊を管轄するポジションに就いていますが、実際にそのポジションに就き、業務を体験してみないと分からないことが非常に多いと痛感します。よく、「ポジションが人を育てる」と言われますが、まさにその通りだと思います。会社から海外駐在を任されたことによって、大きなプレッシャーと引換えに、日本では経験できないような仕事に出会えたことは本当に幸運でした。大企業ならではの規模の大きな仕事を担うことができる機会を十分に活かして、積極的に自己のスキルを伸ばしたいと常々考えている私の場合、その環境に見合った組織の運営方法を確立することが、何より貴重な経験となりました。

 

海外駐在が初めてとなる方の多くがそうであるように、私は、赴任前まではマネジメント経験はなく、海外で初めてその立場に就きました。当然、日本式の組織運営しか分かる筈もなく、日々失敗の繰り返しでした。その間多くの経験を積み、試行錯誤を繰り返した結果辿り着いた結論は、言い古された言葉ですが「郷に入れば郷に従え」ということでした。振り返って考えると意外に単純なことだったのですが、気付くまでに時間を要しました。というのは、赴任当初、現地スタッフの能力において、彼らの得意・不得意分野に大きな「差」があることを認識出来ず、現地スタッフは日本と同様、バランスの取れた能力を持っていると思い込んで、各担当に仕事を割り振っていました。しかしそれでは予想外に人材配置の最適化が図れておらず、問題が発生する度に責任者であるマネージャーが全てを引き受けて解決しなくてはならなくなるという悪循環に陥り、自らの仕事ばかり増え、成果も上がらず苦労の連続でした。現地スタッフ各々の得意分野における専門性は非常に優れており、感心することが多かったのですが、そうではない分野ではいま一つ成果が上がらず、「なぜこれくらいのことができないのだろう。採用を間違えたのか」と当時は毎日のように苦悩していました。しかし、いろいろと悩まされたお陰で、問題の本質である組織運営について真摯に考える良い機会になりました。私なりの最終的な結論は、シンガポールのスタッフはそれぞれ優れた専門能力を持っているが、日本のように広範囲の業務を一手に任せることは難しいということと、スタッフへの指示は明確かつ具体的に行うことという、至って単純なものでした。また、日本における採用とは異なり、ある程度の能力やスキルを持ちながらも、幅広い分野の職務をバランス良くカバーできる人材を見つけることは困難だと認識しました。今では、採用を依頼する時点から、希望する人材の適性も出来るだけシンプルに絞り込むように心がけています。日本と比べますと、シンガポール流の組織構造では社員による分業が明確なため、仕事の範囲が浅く狭くなり、その結果、能力の高低に差が表れるように感じます。

 

理想の組織として、「公平感」、「達成感」、「連帯感」の3つのバランスが上手に取れていることが大切だとよく言われますが、それらを満たせるよう配慮しています。個々のスタッフの目標を明確化し、指示は出来る限り具体的なものを継続して与え続けることでモチベーションを持続させ、またチームインセンティブ旅行等を企画することによって、チームとしての意識付けを実施しています。どのような組織運営をすればより良い成果を出せるのかと考える日々は、私に大変やり甲斐を感じさせてくれます。また、そのようにして考えた運営方法によって、現地スタッフが成長していく過程を実感できることは何よりの喜びです。

 

赴任して5年経過後の今もなお、理想の組織作りはまだまだ試行錯誤の途中です。日本式の運営方法や知識を丸投げするのではなく、現地スタッフの考え方や価値観を理解し、特性を踏まえた上で、どう組織を改善していくかが重要だと思います。厳しい環境の中でも己の気持ちを立て直し、自らの軸を保ちながら、より良い組織運営を目指していきたいと考えています。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.191(2011年06月20日発行)」に掲載されたものです。

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