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2011年9月19日

ダイバーシティー

Mitsubishi Chemical Singapore Pte Ltd HR & Admin Manager 吉幸 剛 業種:化学

少子高齢化、人口減少問題が進展している日本の企業では良質な労働力を確保するという目的において、ダイバーシティー(Diversity)の必要性がここ数年強く叫ばれており、当社も例外ではありません。ダイバーシティーとは「多様性、変化、相違」という意味でありますが、グローバル化を進める企業において求められているダイバーシティーとはその言葉の定義とは少し異なっており、一つは女性の一層の活躍推進であり、もう一つは人種、国籍、宗教等にこだわらない雇用であるかと考えます。企業が従業員をただ単に雇用するだけならば、そう難しい話ではありませんが、その従業員にいきいきと長期間にわたり働いてもらうには相応しい企業文化、環境作りが企業に求められるものであります。ほぼ単一の民族で、日本語という世界の他の国で全く使われていない言語のみを用いる、ある種特異な国である日本においてダイバーシティーを進めることは、国のインフラ整備とともに、企業や経営者の相当な信念が無いとかなり困難を極めるものと考えます。

 

日本の企業は女性の社会進出、働きやすさ向上に向けて、様々な施策を打ち出しておりますが、「これぞ!」という奇策はありません。日本で働くお母さんが困っているのは保育所の問題であり、家事の分担であろうかと考えます。これを解決するアイデアとして企業は社内保育所を作ったり、配偶者である男性の家事参加を促す施策を構築したりしています。
一方、シンガポールにおいて周囲の就労状況を見渡すと、当然のように女性、特に働くお母さんが社会進出しています、何故でしょう。企業が何か特別な施策を打ち出しているのでしょうか?
そのソリューションとして私が当地赴任後に驚いたのは「メイド文化」であります。女性の社会進出が進むシンガポールの家庭において、メイド雇用は必要不可欠なものとなっており、一つの家庭に何人ものメイドが居る家も珍しくないとのこと。シンガポール政府としてもメイド減税なる制度を設け、メイドを雇用する働くお母さんの所得税を軽減し、女性の一層の活躍を促しております。メイド文化がシンガポールの社会インフラを支えている有用な策の一つであることは否めない事実であります。
加えて、外国人の雇用に関して、日本企業の人事部門では非常に苦慮しています。これまで外国人を雇用してきた企業もその定着という意味ではまだ十分とは言えないものかと推察します。その理由として、一つは日本語という言葉や文化・社会インフラという受け入れ側の問題、もう一つは企業内における自己の将来の問題であるかと個人的に思料します。
インフラという点で考えると、ここシンガポールは外国人であるわれわれ日本人が働き、住む場所としては外国とは思えないとても素晴らしい環境であると言えます。街のサインポールには英語、中国語、マレー語とともに、時に日本語の表示もあります。これは中華系、マレー系、インド系の人種、言語、宗教が混在した国において、建国より46年、シンガポール政府のインフラ整備という努力の賜ではないかと感じます。シンガポールの国語はマレー語でありますが、公用語は英語であり、人種や国籍を問わずビジネスの上では英語を用いております。昨今、様々な日本企業において社内公用語の英語化のニュースが取り上げられておりますが、これはダイバーシティーとビジネスのグローバル化を考えると必要不可避の道では無いでしょうか。

 

当地では当然のことと見なされている上記の事項は、日本の現状において導入できるものとそうでないもの、また、過去・現在・未来の時間軸の延長線上において、今後も継続するものとそうでないものがあるかと考えます。近い将来、世界的なM&A合戦により、日本の企業の資本構成も大きく変わり、外資が現在より普遍化することももはや夢物語ではないでしょう。こうした資本構成や経済力の変化は、世界における日本の立ち位置を大きく変え、日本国も日本人も世界の構成員として努力せざるを得ない点、妥協せざるを得ない点が多々生じてくるかと考えます。
さらに、未来の働き方に思いを馳せると、会社と従業員という概念や、雇用という概念も大きく揺らいでくると考えます。更なるIT化の進展は、毎日決まった時間に会社に通勤し働く姿から、労働者が自主的に働く時間、場所を決める世の中を到来させるかもしれません。いずれにせよ、ダイバーシティーは大きな時代の変化の一つの現象と考えます。
私個人はダイバーシティーを進めるにあたり、当地より他に何か良い手段は無いか、今後もアイデアを模索、発信していきたいと思っております。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.197(2011年09月19日発行)」に掲載されたものです。

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