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Employer's Voice

2012年1月1日

仕事の“やりがい”をローカルスタッフに伝えることの難しさ

KOA DENKO (S) PTE LTD アシスタント・セールス・マネージャー 代田 喜之 業種:電気・電子部品

新年おめでとうございます。

多難の2011年が明けました。皆様にとって2012年が良き年でありますことを心よりお祈り致します。

弊社は、抵抗器製造メーカーのシンガポール販売会社として、東南アジア全域およびインド、豪州をテリトリーとして日々お客様への輸入販売活動を行なっております。昨年には創立30周年を向かえ、活気あるこの東南アジアの地で更なる発展を目指したいと考えております。

2005年12月に赴任して早6年の月日が流れ、これまで多くの仕事で苦労、苦難をローカルスタッフと共にし、私自身も管理職として日々苦闘する日々を過ごしております。そんな中でこれまでの諸先輩方からの教えやローカルスタッフの声等から自分がこれまで社内OJTや人材育成を通して再認識したことについてお話したいと思います。

1.日本人は決してプロではない

多くの日本人の方がこのシンガポールの地へ赴任されており、私も同じ立場で働いております。しかし、“決してプロフェッショナルとして赴任しているのではない”という事を忘れてはいけないと痛感しております。日本企業であれど実際に原動力となって会社を動かしているのはローカルスタッフであり、いちシンガポールの企業。そして、私共日本人はこのシンガポールで働かせてもらっています。その事を肝に銘じ、社内での上下関係はあれどいつも同じ目線でスタッフに接する、物事を議論する。これは、非常に重要なことです。一度ローカルスタッフの信頼を失えば“終わり”、つまり“赴任している意味”がないと言っても過言ではないでしょう。日常業務の中で納得できないことも多々ありますが、常に相手の立場も考えた振る舞い、発言が求められます。

2.ローカルにとって転職の回数が自身のキャリアアップに重要な要素

今では当たり前ですが、少し前は「転職」という言葉にあまり良い印象を持つことが無かったような気がします。当然、自身のキャリアアップのために、自分を切磋琢磨するために、更なるステップアップのために転職を手段とすることもひとつの考え方です。しかし、ローカルスタッフは仕事の中身、自身の残したこれまでの就業実績、勤務実績はともかく、なぜか転職の回数がキャリアアップに重要な要素と考えている人間が多いと感じております。それが生む結果が、会社への定着率の低さ(高い離職率)や頻繁なスタッフの入れ替わりです。1ヵ月間のトレーニング後に「さあ、いよいよ本格的に……」というタイミングで退職してしまうスタッフをこれまで何人も見てきました。会社としては、また一から人材を探し、検討・採用し、トレーニングを行なうという繰り返しとなっているのが実情です。早く会社に慣れてもらい、仕事に対する“やりがい”を感じてもらうOJTや社内教育、コミュニケーションはどんな方法が効果的なのか、常に頭を悩ませています。パーフェクトな人間はいません。自社に興味を持って縁あって入社してくれたローカルスタッフそれぞれの良さ、強みを引き出し、それを成果評価に繋げ、“やりがい”を感じてもらい、長く勤めてもらう。これが、私共に与えられている大切なミッションなのですが、反面一番難しいミッションです。

3.中華系民族を良く知る

面子を重んじる民族であり、決して自分が悪いと認めない、謝らない。いきなりきつい表現で恐縮ですが、これが中華系民族の特徴かと思います。問題が起きた時はまず理由(Because…)、その次に言い訳(That’s why…)という流れが通常です。しかし、これは変わるものではありませんので、それをどう生かし、どう上手く良い方向へ導くかも私の抱える大きな悩みの一つです。弊社では品質問題が起きた際には、必ずスタッフ全員で問題を共有します。不運にも問題を起こしてしまったスタッフにはプレゼンをしてもらいます。これは、決して問題を起こしてしまったスタッフに対する見せしめではありません。理由の一つ目は、いつか自分も同様の問題を起こす可能性がある事に気付かせる。二つ目に、どんな小さい提案でもその場で考えさせる、発言させる、一緒に問題解決に取り組ませる。

“問題を起こせばプレゼンが待っているから、普段から気をつけよう”という危機意識をスタッフに持たせる啓蒙効果もありますが、業務上の責任範囲を決めていても、実際には部署間で些細な理由で責任を転嫁する場面も多く見られるため、更に効果を上げるための工夫を今後重ねる必要があります。

是非とも多くの皆様のご意見をお聞かせ頂きたく、よろしくお願い致します。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.203(2012年01月01日発行)」に掲載されたものです。

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