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Employer's Voice

2012年1月16日

ビジネスとスタッフの成長へのチャレンジ

Car Club Private Limited ジェネラルマネージャー 朱雀 千穂子 業種:カーシェアリングサービス

 

カーシェアリングというサービスをご存知でしょうか。週末など長時間のレジャー利用が主であるレンタカーに比べ、ちょっとお買い物に行く、ご家族の送り迎え、あるいは社用で時々数時間利用する機会のある法人様に、最低1時間、その後30分単位でレンタル可能なサービスを提供しています。現在はシンガポール国内に150台の車を52ヵ所の駐車場に配置し、約3,000人の会員様に便利にご利用いただいています。ご存知の通り、ここシンガポールは政府による車両登録の総台数規制があり、車を所有するためにはCOE(Certification of Entitlement)という10年間の所有権を車両と一緒に購入する必要があります。特にここ数年はCOEが高騰し、車は大変高価な買い物となっています。

 

私は昨年4月末に親会社からの出向社員として着任しましたが、初の海外勤務であり、また現在も人事は担当外ですので、シンガポールの人材事情について経験に基づいたお話をできる立場にありません。従いまして、今回は海外勤務新米社員の目線で、この8ヵ月弊社で上司、同僚と一緒に仕事をしてきた中で感じたことを書かせていただきたいと思います。

 

弊社は現在総勢10名程度の小さい会社で、私の他は社長も含め全てシンガポール人スタッフです。またほとんどのスタッフは社歴が長く(2009年前身の事業会社から独立時に転籍)、いわゆるベテランで、従って愛社精神もあり、必要あれば残業や休日出勤も厭わず、業務に対する姿勢も非常に前向きかつ熱心です。これは弊社に特殊な例かもしれませんが、私が着任前に周りの先輩・同僚から話を聞き持っていた、シンガポール人スタッフは仕事に対する姿勢が効率重視でクールであるというイメージを覆すものでした。

 

一方で、ある種家族的な雰囲気が業務にも影響しており、これまで担当業務に敢えてあまり明確な線引きをせずに皆で助け合ってきた部分が逆に非効率を招いているのではと思うところもあります。今後会社の成長と安定したサービスの提供を両立させていくために、車を増やし、会員を増やすと同時に業務の効率化、標準化を進めていく必要がある中においては、ある程度の担当業務のマニュアル化は必要ですし、マーケティング、カスタマーリレーション、車両のオペレーションなど担当業務の専門性を磨いていく必要がありますが、「助け合い」の精神がそれを妨げてしまう部分があることも否めません。まさに私の喫緊の課題はこの状況の改善に向けて、有効な組織体制の確立、業務効率化を推進することにあります。

 

ただ言うは易しで、現状この改善活動は思った以上に難しく、上手く運んでいません。理由の一つは、車が増え、会員が増えている状況がすでに始まっている中で、スタッフそれぞれが目の前の仕事で手一杯で、マニュアル作成などには手が回らず、従い効率化可能なポイントが見えてこないところにあります。スタッフ自身が長く今の仕事に従事しているため、自分の中ですべて業務の進め方が確立してしまっていて、たとえ非効率な部分があったとしても何とか力仕事で片づけてしまっており、また横の連携を視野に入れて仕事のやり方を少し変えてみるというような思考が今のところ見受けられません(それこそ助け合いだと思うのですが……)。私自身の経験不足、力不足があり、なかなか効率化の具体的な効用を理解してもらうことができずにいますが、実際に既存のやり方では時間が足りない、手が足りないという状況が出てきているので、この機会を捉えてまずは業務の効率化、標準化の必要性を実感してもらい、具体的な方策を一緒に考えながら前に進めたいと考えています。

 

あと一点申し上げるとすれば、自分の業務の範囲を広げようという意欲がもう少しあればいいかなと感じることが時々あることです。先に述べた仕事に前向きであるということと相反すると思われるかもしれませんが、自分の業務はここまでと決めてしまっているのか、それを超えて手を出してみる、提案してみるという機会があまり見受けられません。これはレベルの高い要求かもしれませんが、自分がこれまで働いていた職場では例え補助業務であってもそうした姿勢の同僚がたくさんおり、その蓄積も含めてチームの力になっていたと思うので、弊社においても、少しずつでもシンガポール人の同僚の意識を変えてスタッフが能力を最大限発揮できる環境を作り、カーシェアリングビジネス、会社と共に私も含めてスタッフが成長していくことができればよいと考えています。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.204(2012年01月16日発行)」に掲載されたものです。

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