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2012年2月20日

出る杭よ、でてこい

RE&S Enterprises Pte Ltd ダイレクター 筒井 貴彦 業種:レストラン

弊社はシンガポールで色々なコンセプトの日本食レストランを運営しております。その代表的なブランドにはカジュアルレストラン「いちばんぼし」、「いちばんすし」、本格的日本料理を提供しております「厨」、手打ちそばの「新ばし」、ご家族でお腹いっぱい食べられるブッフェレストラン「くいしんぼう」などがあります。店舗数は41店舗、社員は1100人を超えております。
日々、おいしくて安全でちょっと幸せになれる食事を提供すべく努力しておりますが、まだまだ至らないところが多いのではないかと思います。気づかないと変われないのは当たり前のことなので、もしご指摘いただける課題があればどうぞお知らせください。

と前置きはこの辺りにして、今回のテーマ、海外で活躍したい人たちにアドバイスを申し上げます。まずは、弊社で活躍してくれている日本人の皆さんが、どんなポジションで頑張ってくれているかを少しご紹介します。私を含めれば30人ほどの日本人が弊社で働いておりますが、ほとんどの方が専門職という形で接客であったり、調理技術などの専門技術や経験をお持ちです。インテリアデザインのプロジェクトコーディネーターやグラフィックデザインの担当をしてくれている方もいらっしゃいます。逆に言えば武器となる技術や経験を深く掘り下げて身に着けていないと、やる気だけでは海外で自分のポジションを確保して生活基盤を造り、仕事をしていくことが難しいということになります。

もう一つ指摘しておきたい点は、日本人が昔はオハコとして確保していたポジションは、どんどん現地化されているという点です。これには色々な理由があります。調理のスペシャリストの場合、現地人シェフの経験や技術がレベルアップしてきたこと、特殊な技術をカバーするような付加価値の高い調味料や食材の流通体制が整ってきつつあること、コストの面で日本人を雇うのはインセンティブが働かなくなってきたこと、昨年来外国人の労働者枠が絞られてきて、人を雇いたくても雇えなくなってきていること、そして何よりも現地の方にはこの国の言葉で自由にコミュニケーションできる能力があり、彼らには市場がより的確に見える強みがあること、こんな様々な周りの環境の変化が、日本人シェフの雇用事情に影響をもたらしております。

シンガポールでも他の国でも同じですが、基本的にはその国民の雇用を守ることが、国の政策の基本にあります。外国人の流入には制限が当然つけられます。ただこの国の歴史は、積極的な移民の流入と、行き過ぎた流入の調整というサイクルを繰り返してきています。急速な高齢化社会への進行と改善しない若年者の出生率を見れば、これからも成長のためには、管理された移民政策を、試行錯誤を繰り返しながらも取り続けることと思います。事業者には、手のひらを返すようなポリシーの転換は少々困りものですが、能力のある若いタレントには、多少厳しくなったとはいえ、シンガポールでの雇用機会は開かれているし、これからもそうあり続けるでしょう。

ありきたりな結論ですが、人種を問わず成果と能力がこれまで以上に厳しく問われていくことになっていきます。そして成果を上げるために何よりも必要な基礎能力は、コミュニケーションが適切にできること、言い換えればしっかりした自分の意見を持つと同時に、立場の違う人の視点に立って思考を深めていける懐の深さです。一方で企業の側には、コミュニケーションの本質を理解し、風通しの良さ、建設的な討議ができるカルチャーを醸成しているのかどうかも、厳しく問われていくのだと思います。

今年から直属の部下のもう一つ下層のJr Managementのチームとの直接対話を始めています。ただ“上から目線”で、こちらがテーマを決めて講義をするのではなく、彼らが日々問題として感じているテーマを決めて、議論する方法にしました。私はどちらかといえばファシリテーターの役割をしています。視点が違う彼らの物の考え方や、日々の苦労を共有はできなくても、知覚することで私自身、考えを深められるのだということを学習させてもらっております。そして何よりも議論に参加した彼らの目の輝き!!しまった、と思いました。なんでもっと早くやらなかったんだろ。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.206(2012年02月20日発行)」に掲載されたものです。

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