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2013年3月18日

なぜ『気概に富む』日本人は少ないのか?

シャムロックパートナーズ マネージングダイレクター 千葉 豊 業種:IT/投資

私自身、これまで長年システムエンジニアとして中小企業および外資生保でのシステム開発に従事してきました。30代前半のときに自分の人生を振り返り、「後悔は絶対にしたくない」という思いで起業、さらにその事業を譲渡した後、シンガポールへ移住しました。
様々な内外環境の変化がありますが、近頃日本人としての「気概」が失われつつあるのではないか、ということを感じているのは私だけではないと思います。

数年間の採用活動を通して感じたこととして、いくつかの要因を挙げてみました。

気概不足の要因

1.日本人としての恵まれた環境による影響

平穏に過ごしているとなかなか感じることができないと思いますが、豊かな国である日本で生まれ、日本国籍であることは、とても幸運なことであります。
多少「気概」が無くても、生涯安定しそうな社会で暮らし続けることは可能です。その中から現状を突破し、さらに良い生活を目指し、社会貢献へと繋がる考えは生まれにくいかもしれません。

2.仕事での責任感不足

どのような組織でも、責任を持って遂行してくれる社員は少数なのが現実だと思っています。物資が少なく食べる物が少ない時代でないと、「気概」を保ち続け目標を達成するまであきらめずに自責として仕事を遂行する社員は育たないのでしょうか。
しかし、社員全員の教育には限界があり、やはり入社前の個人の仕事に対する価値観が影響しています。

3.自分自身の存在意義

「人材」、「人財」という言葉は、企業視点での言葉です。自分自身を確立し、自己実現(成功)しようと考えているなら、自分自身の「気概」を更に高め、常にチャレンジし、自分を育てていく必要があると考えています。特に「就職」でなく「就社」している場合は、そのような考え方を持つことに意味があり、外的要因(景気/不景気)に左右されないことが重要です。
現代人は多忙によって自分自身を深く考える時間が少なくなり、人生として平均点が心地良いという社会に埋もれていくような感じが漂っています。

4.次の世代へ伝えたいこと(伝わっていないことによる弊害)

  1. 日本人としての人生観
    戦後の発展や大災害からの復興支援も、危機を通して日本人が団結し、支え合ってきました。四季があり、はかない人生を詠む俳句/短歌に見られるように、情緒豊かな感性が人生観と繋がっています。近年では自らの人生観を伝えることができない人が多くなっているようです。
  2. 歴史
    日本の教科書、ニュースだけでなく様々な媒体を通じて、正しい歴史を伝え、平和のために先人が解決してくれたことに対して理解し感謝することが大切です。
  3. 仕事を通しての自己実現(行動の信念)
    毎日の繰り返しで生涯を閉じるより、目標を掲げ、チャレンジし、自己実現する生き方は生活に潤いを与えます。特に仕事にかかわる時間は、生涯を通じ比率が高いものです。指示されたことをこなすだけでなく、自ら創意工夫し、いつでも一国の主としてどこの国でも働けるような個人になるように心掛けると、さらに充実した人生になると思います。

会社として採用活動はとても大切ですが、個人として最も大切なのは、「自分自身の思考」や「行動習慣」を良い方向へ変える事ができる「意思の強さ」=「気概」ではないでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.230(2013年03月18日発行)」に掲載されたものです。

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