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Employer's Voice

2013年4月1日

シンガポールでの人材採用を通しての所感

Henry Investment Services Pte. Ltd. Managing Director 石田秀明 業種:経営コンサルティング、投資アドバイス、会計、セクレタリーサービス

弊社は、事業投資、金融投資や不動産投資をされる日本人、日本企業の支援を主としているコンサルティング会社です。2008年に進出しましたが、昨年3月までは日本での会計事務所運営と併行しておりました。2012年3月に会計事務所を営業譲渡して廃業、現在はシンガポール事業に集中しています。

弊社の人事について振り返ると、初めて人材を採用したのが2011年。この初めての人材募集から現在に至るまでの人事にまつわるエピソードを紹介しながら所感を述べたいと思います。

シンガポールでの初めての人材採用

会計事務所時代、とある国際会計事務所のメンバーファームに参画していた時期があり、そのシンガポールのメンバー会計事務所と知り合っていたこと、そして、友人から人材紹介事業を行っているローカル企業を紹介してもらっていたこと、この2つのローカルのコネクションが当時の私にとって救いでした。

そこで、2011年にそのローカルの人材紹介会社に、スタッフ2名の募集を依頼しました。英語、日本語、中国語のトリリンガルスタッフを希望。このため、日本人よりもローカルで日本語ができる方を選択しました。

たくさんの候補者の中から採用を決めたのは、Aさん(シンガポール人既婚女性26歳)とBさん(中国人独身女性24歳)でした。両者月給3,000ドル+年末のAWS、そして可変賞与(Variable Bonus)という条件で入社してもらいました。二人とも意欲の高い方です。特にBさんは、就職活動を行うための滞在許可で、中国から単身入国。大志を持った意思の強い方でした。

面接のあとに、Bさんから丁寧な日本語のお礼の手紙が届きました。季節の挨拶、面接できたことへのお礼、面接で会社の事業と求められる職務内容を聞いて自分はその中で何ができるかというPR、この点は自分には不足しているので勉強をして戦力になりたい、などのコメントが書かれていました。

日本での採用と比較しますと、同じ給与水準で、トリリンガル、経理がある程度できる人を採用できるだろうか?その先を考えると、日本での労働市場はまだまだ国際競争にさらされておらず、ぬるま湯ではないだろうかと思った次第でした。

採用後の職務のアサインメントと人事管理に反省

AさんとBさんを採用してからもしばらくは日本の会計事務所業務との並行で、私は事務所を不在にすることも多くありました。そこで、まず業務について研修を行い、その後いくつかの業務を二人で協力して行うよう指示していました。しかし、そこに私の大きな間違いがありました。二人の職務について、一人だけにある職務が集中して労働負担が偏ったり、仕事の精度にばらつきが出ていたのです。

その原因は、“二人で協力して行う”という曖昧な指示をしていたからだと気付きました。各人の仕事の精度、つまりどこまですればいいのかというのは、その人の主観であり、差が出ます。業務マニュアルを整備して基準化するとともに、業務を分業し、それぞれに違う職務の権限を与え、また責任の所在を明確にしましたのでした。日本では曖昧な指示でも結果のイメージを伝えていると、受ける側が意を汲み取るというような文化がありがちですが、こちらでは具体的で明確な指示が必要なのだと反省しました。もっとも、今は日本でもそのようになっていますね。

また、シンガポールでは出産に関して非常に保護が手厚く、日本より女性の社会進出が進んでいるんだなぁと感じました。現在Aさんがちょうど出産休暇に入っていて、給料を支給しています。この政策は少子高齢化の対策にも貢献しているのでしょう。

シンガポールの外国人労働者と就労ビザの難しさに奮闘

現在、新たに社員の採用を行っているところです。就労ビザに関しては外国人の割合の制限があり、その中でもEPとなると給与水準が今は相当上がってきている点など、外国企業にとっては非常にやりづらくなってきています。また、最近の予算委員会の動きをみていると、国民・PRに対してのSパスの割合がさらに厳しくなるなど、今後の人事政策は大きく変わっていくでしょう。

よって、今回はシンガポール人の採用を増やしました。日系企業に応募するシンガポール人だけに、日本に対する理解の深い方が候補に来られます。今後、弊社のような日本人が経営する企業に期待をかけていただけるシンガポール人に対して、日本のいい文化と事業ノウハウを伝承し、人材育成と両国の経済発展に寄与できるよう、精進しなければと考える次第です。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.231(2013年04月01日発行)」に掲載されたものです。

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