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2013年4月15日

日本人の会話力、交渉力について

CKSプロパティコンサルタンツ Business Development Manager 広瀬麻理 業種:不動産仲介、投資コンサルテーション

私は2006年にシンガポールに移住して以来、さまざまな国籍の友人、同僚、上司の方たちと交流を図ってきました。来星前は日系企業に勤めていましたが、仕事柄海外に行くことが多かったため、自分では英語はある程度できるほうだと思っていたのですが、いざシンガポールで暮らし始め、自分の会話力、交渉力の乏しさに愕然としたものでした。

しかしながら、私のターニングポイントは、日本人がまわりにいない環境で長年暮らしていたことと、当地のマーケティングの学校に通ったことでした。分厚いテキストブックを何冊も読み、課題もエッセーもすべて英語で1からマーケティングの手法を学びました。アジアのハブ、シンガポールを中心にグローバルなマーケティングを学ぶという、現在の私の仕事に非常に役立つコースでした。

クラスの中で日本人は私1人で、クラスメイトは全員海外からの学生と、ローカル学生との混合クラスでした。日本人の学生が非常に少ないので、とてもめずらしがられ、講師や学生たちからいろいろ質問されました。中でも中国からの若い学生の人達とグループ課題をこなす機会が多く、彼らは英語の会話力は乏しいものの、グローバル経済に対する知識や発想、英文エッセーの書き方などが非常に優れていたのが印象的でした。今から4年前の事ですが、今までアジア経済を牽引してきたリーダーが、日本から中国へシフトしていくのを学生の立場で感じていました。この貴重な経験の結果、ビジネス英語力がついたのと、人前で臆せずにプレゼンテーションをする会話力、表現力を身につけることができたと思います。

過去に勤めていた外資系企業や現在の会社CKSでも、日本人採用の面接に同席させてもらうことがあるのですが、履歴書上と実際の英語力の差を感じることが多いです。

履歴書ではTOEICのスコアが800点以上の方でも、実際に英語で面接をしてみると、会話にならないぐらいしどろもどろだったりします。きっと読み書きはスコアの通りできると思うので、非常に残念に思います。発音や言い回しは流暢でなくても全然よいと思うのですが、少なくともシンガポールで英語を使って仕事をするポジションに応募してくるのですから、ある程度のビジネス英語と会話力を備えていないと、採用にはつながらないのだなと思います。 仮に入社できたとしても、その後上司や同僚、お客様とも英語で話す機会が多いわけですから、かなりの会話力、交渉力というのが必要になってくると思います。

また海外で仕事をしていくのに、英会話力だけでなくバランスの良い交渉力も必要になってきます。押しが強いだけの交渉ではうまくいきません。私が交渉をうまくできないことで悩んでいた時期に、ライフコーチングをしている友人から薦められた1冊の本があります。『Getting Pass No』(William L.Ury著)という本なのですが、私たちの日常は交渉(negotiation)の連続だという話から始まります。

朝、誰が新聞を取りに行き、ごみを出し、子供たちを学校へ送っていくか?というのも夫婦間で日常的に行われる“交渉”です。この小さな交渉を、いかにうまく自分の思うように運んでいくか?というスキルを身につけるというのがこの本の焦点になります。交渉力のなさに自信を失っていたときに、とても励まされた1冊でした。

日本人は概して遠慮がちな国民性を持ち、それが美徳ともされています。私も細やかな気が使える日本人でありたいと思いますが、遠慮ばかりしていてはビジネスにつながりません。文化も言葉も異なる外国人を相手に交渉をしていかなくてはならないのは、日本人としてはなかなか容易なことではありません。シンガポールの不動産業界はアグレッシブなエージェントとオーナーさんが非常に多いです。その中で日本人がバランス良く入っていくのには、十分な会話力と交渉力のバランスの良いスキルが必要だと痛感しています。

最近では、中華系マレーシア人の活躍に本当に驚かされます。英語はもちろんのこと、中国語(マンダリン)、マレー語、中には広東語ができる人も多くいます。日本が好きだから、という理由で日本語を一生懸命勉強しているマレーシア人の友人もいます。

日本人の若い世代の方も、今後シンガポールのような多言語を実践で学べる環境で、ひとつ殻をやぶって、居心地のよいcomfort zoneから出て、貪欲に経験を積み、さらにバランスの良い交渉力を身につけることができれば、今後の日本経済の発展に大いに貢献できるのではないかと思います。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.232(2013年04月15日発行)」に掲載されたものです。

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