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社説「島伝い」

2019年9月25日

課題解決に必要なリーダーシップ

 毎年恒例の建国記念日大会(ナショナルデー・ラリー)が8月18日に開催され、リー・シェンロン首相が約1時間20分に及ぶスピーチを行いました。このスピーチでは長期的な政府方針が詳細に語られることから、国民はもちろん外国人も高い関心を持っています。今年のスピーチでは、1就学前教育と大学やITEなど高等教育への支援強化、2定年退職後の高齢者の就業継続、3地球温暖化による気候変動の影響とその対策、4国土開発計画および開発予定地とその具体的内容――の4点が語られました。今年は1と2にも見られるように少子高齢化対策に重点が置かれたスピーチでもありました。

 

 シンガポールは、国民の平均寿命が85歳近くと世界一の長寿国である一方、2018年の特殊合計出生率が日本の1.42をも下回る1.14で、少子高齢化対策は日本と同じく喫緊の課題。小学校からではなく、就学前教育から積極的に支援し始めているあたりに、国の宝である子供達をより大事に育てようという強い意向が伺えます。また、定年退職後の高齢者の就業継続に関しては、法定の定年年齢を62歳から67歳へ、就業継続希望者の再雇用を67歳までから70歳までに、それぞれ2030年までに徐々に引き上げることが発表されました。それに伴い、年金制度である中央積立基金(CPF)の積立率も変更され、現在55歳から漸減する積立率が2021年1月より少しずつ引き上げられます。企業には負担増ともなるため、軽減措置が来年度予算案に盛り込まれることを首相が明言しました。

 

 日本での定年年齢は60歳以上と高年齢者雇用安定法で定められ、各企業は65歳まで定年を引き上げるか、65歳まで継続雇用制度を適用する、もしくは定年廃止のいずれかの措置を取
らなければなりません。そのためか日本では、定年は法律よりも各企業の就業規則で決まっているという印象があります。

 

 定年や再雇用に限らず、シンガポールでは国が積極的に主導する領域が多くあります。例えば、外国人の雇用基準が厳格化して10年近く経ちますが、2010年代初めまでの経済的な急成長からここ数年の安定成長へと移行する中で、全体のバランスを崩すことなく、シンガポール人の人材が活躍する場がより広がってきています。これは国としてシンガポール人の雇用を促進する枠組みを作り、地元の人材を育成するよう奨励し、時には外国人頼みの企業をウォッチリストで監督する、といった取り組みを粘り強く続けてきた成果といえます。シンガポールのリーダーシップと政策は、日本としても関心を強く持つべきでしょう。 (千住)

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