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社説「島伝い」

2019年5月25日

未来へつながる変化にする

5月1日に日本では新しい天皇陛下が即位され、平成から令和への改元が行われました。天皇の退位は江戸時代以来約200年ぶりとのことで、皇室に関する法律である皇室典範でも天皇の終身在位が定められている中、とりわけ歴史や伝統を重んじる皇室に関わることで特例法による手続きが可能になるまでには、おそらくさまざまな紆余曲折があり、準備にも相当かかったことでしょう。それは「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」が平成28年(2016年)8月に発表されてから3年近くを要したことからも推察できます。それでも今回退位という特例が実現されたのは、非常に画期的なことでした。

 

次世代へバトンを渡す準備は、ここシンガポールでも着々と進んでいるようです。5月1日には内閣の小幅改造があり、ヘン・スイーキアット氏が財務相から副首相に昇格しました。ヘン氏は昨年11月に実施された与党・人民行動党(PAP)の幹部会でリー・シェンロン書記長に次ぐポストである第一書記長補にも選ばれており、事実上の次期首相候補。また、昨年4月の内閣改造後、16省のうち10省で既に第4世代と呼ばれる指導者が大臣になっています。次回の総選挙の実施期限は2021年1月ですが、それよりも早い時期、例えば今年中に実施される可能性もあることはリー首相が既に示唆しており、政権の移行が行われるのはかなり近い将来のことになりそうです。さらには隣国マレーシアでも、昨年5月の総選挙で勝利して首相に返り咲いたマハティール氏が、選挙期間中から後継者として20歳以上若く、副首相の経験もあるアンワル氏を指名し、2年を目途に交代することを明言しています。

 

日本国民の象徴である天皇の代替わりとシンガポールやマレーシアのトップである首相の交代とがかなり近い時期に起きつつあること自体は、単なる偶然かもしれません。しかし、いずれの国でも新しい流れができつつあり、それはそれぞれの国で状況の変化に合わせて未来を見据えた判断がなされ、その結果起きているものといえます。

 

新しい流れがある中で、個人あるいは組織としても今まで通りのことを続けるのではなく、変わっていく必要がある、と言うのは簡単ですが、実行するのは容易いことではありません。また、既存のものを破壊と呼べるほど完全に変えてしまい、本来あった良さや強みまでも損なってしまっては意味がありません。それぞれが持つ良さを生かしつつ、未来へとつながる変化にして、新しい流れをうまく捉えたいものです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.346(2019年6月1日発行)」に掲載されたものです。

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