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社説「島伝い」

2018年8月28日

何があればしあわせ?

シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院の独立研究所である政策研究所(IPS)が7月末に発表した全国調査の結果で、シンガポール国民にとって最も価値あるものの上位10項目に「家族」、「健康」などと並んで今回新たに「ユーモア・喜び」、「家庭と仕事のバランス」が入っていたことが分かりました。この調査は2012年から3年ごとに実施されていて今回が3回目。その他の上位10項目を見ても「優しさ」、「友情」、「責任」、「誠実」、「幸福」、「思いやり」と人との関係や心のありように関わるものばかりでした。これは、かつて「5C」という言葉がよく使われていた2000年代ぐらいまでのシンガポールを知る人にとっては、少々意外かもしれません。

 

「5C」とは、「金(Cash)」、「車(Car)」、「クレジットカード(Credit Card)」、「コンドミニアム(Condominium)」、「ゴルフ会員権(Country Club)」のこと。ステータスの象徴とされ、5Cにあてはまる男性は理想の結婚相手などといわれていました。その頃のシンガポールは「拝金主義」や「物質主義」といったイメージで語られることもしばしばでした。また、「シンガポールは小さい国で面白くない」と自嘲気味に語る国民も珍しくなく、シンガポールを離れてオーストラリアやカナダへ移住する人も相当数いました。

 

しかし近年、5Cといった言葉はあまり聞かれなくなるとともに、シンガポールという国への強い誇りや愛国心を持つ国民が増えているのを感じます。8月9日には53回目の建国記念パレードがザ・フロート@マリーナ・ベイで実施されましたが、今回も大変な盛り上がりでした。会場だけでなく、さまざまな場所でその盛り上がりを実感した方も多かったのではないでしょうか。

 

ここ10年ほどでシンガポールは経済的にも大きな成長を遂げ、国全体が豊かになりました。それに伴って、人々のものの見方や考え方も大きく変化してきているようです。似たような流れはかつて日本でも見られました。戦後の復興期を経て奇跡とも言われる高度経済成長を遂げましたが、その一方で公害や過労死といった社会問題も顕在化。その反省から、経済的あるいは物質的な豊かさを追求するばかりでなく、より人間的な豊かさを求める方向へ進むべきだとされるようになりました。

 

おそらくシンガポールでも、人間的な温かさや豊かさを求める流れがより強くなるでしょう。社会にも新たな変化が起こると考えられます。シンガポールでビジネスを展開していく上で、変化するニーズに今後どう応えていくべきか、今回のIPSの調査結果にもさまざまなヒントがありそうです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.337(2018年9月1日発行)」に掲載されたものです。

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