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社説「島伝い」

2018年7月27日

制度は活用するためにある

商売をしていて一度も悩んだことがない人はおそらくいないと思われるのが、売掛金の回収。もっとわかりやすく言うと取り立てです。お金の話を大っぴらにするなんて、と顔をしかめる方もいらっしゃるかもしれませんが、今回は敢えてそのタブーを破って話を進めたいと思います。

 

どこの企業でも、取引先の大半は期日通りに支払いがあるでしょうが、期日を過ぎても支払いがなく、催促しても全然応じてもらえない、ということが残念ながらあります。裁判で争うことになれば、相当な時間や労力、費用がかかり、請求金額が小さい場合は裁判で勝ってもさまざまな面でむしろマイナスになることも。しかし、割に合わない、と回収自体を諦めるのは早計です。そういったケースのために、少額訴訟の制度があるからです。

 

日本での少額訴訟は、民事訴訟で60万円以下の金銭の支払いを求める場合に限って利用できる特別な訴訟手続きになりますが、シンガポールでは少額事件法廷(Small Claims Tribunals)で少額訴訟の手続きを取ることができます。シンガポールの場合は上限額が1万Sドルで、これを2万ドルに変更することを含んだ改正法案が先月9日、国会を通過しました。改正内容には、請求権が発生してから少額訴訟で請求できる期間を1年から2年に変更することなども含まれ、今後より多くのケースが少額訴訟で迅速に解決可能になると期待されています。

 

シンガポールの少額訴訟は大きく2段階になっており、書記官(Registrar)を交えて当事者同士で和解に向けた話し合いを行う調停手続(Consultation)の後、和解に至らなければ審理手続(Hearing)に進み、審判官(Referee)が当事者双方の主張を聞いて最終的な命令(Order)を下します。弁護士が代理人を務めたり、当事者に同伴して出廷することはできません。通訳が必要な場合は、事前に申請すれば自己負担で手配できます。基本的には自ら出廷して進めなければならないものの、書類提出などの手続きは2017年7月からすべてオンライン化されていて、手数料は個人の場合10~20Sドル、法人の場合でも50~100Sドル。金額が小さくても、相手の対応が不誠実であったり、不当な請求を受けた場合などには、妥協したり泣き寝入りする前に、少額訴訟できちんと主張を通すことを考えた方が良さそうです。

 

1985年からある少額訴訟制度も含めて、シンガポールではビジネス環境を整えることが国策として進められています。ビジネスに有益な制度は積極的に活用し、企業を健全に発展させることは、この国への大きな貢献にもなるでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.336(2018年8月1日発行)」に掲載されたものです。

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