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社説「島伝い」

2018年6月25日

国々の動き

5月から6月にかけてのシンガポールでは、他の国々の動きによる影響をひと際感じることが続きました。その筆頭は米朝首脳会談。シンガポールでの開催が5月10日に発表されたものの、同24日には一転、北朝鮮側の対応が不誠実であることを理由にトランプ米大統領から中止の発表がありました。そして6月1日、開催が再度決定され、同12日実施ということになりました。

 

首脳会談の前後の期間はかなり厳しい警備体制になると想定されたことから、一般市民の間でもどこか緊張した空気が感じられました。会場となったカペラ・ホテルがあるセントーサ島と共にタングリン地区の一帯も「特別行事エリア」に指定され、仕事や日常生活で影響を受けた読者の方もいたことでしょう。

 

また、隣国マレーシアが5月末に発表したクアラルンプール・シンガポール高速鉄道(HSR)プロジェクトの中止も、シンガポールにとって大きなニュースでした。マハティール氏率いる野党連合・希望同盟は、5月9日に実施された総選挙に勝利するとその直後から選挙公約を次々と実行、実現困難とみられていた物品・サービス税(GST)廃止も6月1日付で実施されました。首相経験者であるマハティール氏が指揮しているとはいえ、政権交代後の矢継ぎ早の対応は鮮やかであり、そのスピード感には圧倒されます。そういった流れの中である程度予測されていたものの、既に一部工事の入札が始まっていたタイミングでの中止発表に、現政権の決断力や実行力が改めて感じられました。

 

HSRでシンガポール~クアラルンプール間の移動がよりスピーディかつ便利になると期待していた人々や、工事での入札準備を進めてきた中国、日本、ヨーロッパなどの各企業連合にとっては、中止は残念だったでしょう。一方、5~6年前には日本円でおよそ1兆円程度とされていた総工費が結局3倍以上に膨む見込みとなるなど、両国の財政への悪影響を懸念する声もあり、中止の判断は賢明とする意見も少なくなかったようです。

 

ただし、クアラルンプール~シンガポール間で高速鉄道を敷設するというアイディア自体は長年存在するものであり、いずれかのタイミングで形を変えて再び動き出すことも十分考えられそうです。また、HSRプロジェクトにあわせて進んでいたジュロン地区の再開発計画も、多少の変更はあるとしても「第2のCBD(中央商業地区)にする」という方向性は変わらず進んでいくと見られます。国々が動くことによって起こる身の周りの変化を自分達のチャンスにできるように、我々も常に準備しておくことが今後ますます必要になるのかもしれません。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.335(2018年7月1日発行)」に掲載されたものです。

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