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社説「島伝い」

2018年2月27日

「トレー返却」がホーカーセンターを変える?

「ホーカー」はシンガポールの人々の食生活になくてはならない存在。19世紀以降、移民たちの中で天秤棒を担いで食べ物を売り歩くホーカー(hawker、行商人)が現れたのがそもそもの始まりとされます。1970年代以降、政府の主導で「ホーカーセンター」の整備が進み、現在のような一つの場所にさまざまなストールが立ち並ぶスタイルになりました。

 

老若男女に長年愛されてきたホーカーセンターですが、近年、ホーカー経営者の高齢化や、後継者不足の問題などもあり、利用者としても経営者としても若者のホーカー離れが言われるようになりました。シンガポール独特の文化でもあるホーカーを次世代にも継承していくべき、という動きが生まれ、5年ほど前からは政府が本格的にホーカーの保存や支援に取り組んでいます。また、食事をしながら音楽ライブが楽しめるTimbre+や、チャンギ国際空港第2ターミナルにある日本食のフードコート「SORA」など、新しいスタイルのホーカーセンターも増えています。

 

最新技術や新たな仕組みのホーカーセンターへの導入も進められています。今年4月からは、銀行系決済ネットワークのNETSと交通系ICカードのEZ(イージー)リンクが提携し、NETS端末のあるホーカーでの支払いにEZリンクカードが使用可能になります。銀行口座を保有していない人が多い高齢者や学生、あるいは旅行者などでも便利なキャッシュレス決済が利用できるようになります。さらに、客が利用するトレーへのデポジット(預り金)制度の導入も一部のホーカーセンターで始まりました。トレーを返却すればデポジットも返金されます。

 

日本ではフードコートなどで食事が終わった後トレーを返却することが一般的であるため、デポジット制度まで導入しなければトレーの返却を徹底できないのだろうか?と思われてしまうかもしれません。しかし、例えば若者に人気の高い米系ファストフード店などでは、トレーの返却率はかなり高そうです。トレーをテーブルに残したまま店を出る客もたまに見かけますが、その多くは比較的年齢が高い世代。食事が終わった後トレーを片付けるかどうかは、どうやら世代間にも差があるようです。

 

トレーのデポジット制度は、今後複数のホーカーセンターで導入が進められる予定。現在は2割程度と言われるホーカーセンターでのトレーの返却率が今後大きく上がるのか、そして若者離れに歯止めがかかり、清潔なホーカーセンターで食事をしたり、ホーカーを営む若い世代が増えるのか、この制度に託されている期待は実は相当大きなもののようです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.331(2018年3月1日発行)」に掲載されたものです。

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