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社説「島伝い」

2017年11月24日

師走を迎えるにあたって

2017年のカレンダーも残り少なくなってきました。今年のシンガポールを振り返ってみると、初の女性大統領誕生やチャンギ国際空港第4ターミナル開港といった大きな話題もありましたが、比較的平穏な年といえそうです。

 

一方、シンガポールで活動する日系企業にとっては、試練ともいえる年になりました。その要因のひとつが、1月からのエンプロイメントパス(EP)発給基準の厳格化。7月からはSパス発行枠の計算方法も改定され、こちらも一層厳しくなりました。さらに、シンガポール人の雇用・育成に消極的とみなされた日系企業が、「ウォッチリスト」への掲載を突然通知され、EP申請が滞るといった事態に悩まされるケースも出ています。身の回りでも、日本人が以前より減っていると感じることが増えています。

 

しかし、現時点でシンガポールでのビジネス活動を継続できているということは、この厳しい状況を1年近く乗り越えたということでもあります。2018年もしっかり生き抜くためには何をすべきか、来年になったらではなく、今のうちから考えたいところです。

 

おそらく大きなヒントになるのが、シンガポールという国が目指している方向性。それは、毎年2月から3月にかけて発表される政府予算案や、8月の建国記念日の首相メッセージなどからも読み解くことができます。例えば今年の建国記念日のメッセージでリー・シェンロン首相は、「就学前教育の充実」「糖尿病予防」「情報技術(IT)を最大限利用したスマート社会の構築」の3点に力を入れて、強靭な国家を造ることを訴えました。この3点はあまり関連性がなさそうですが、いずれもシンガポールで急速に進みつつある少子高齢化への対策につながるもの。子供達が幼児期から質の高い教育を受けられるように環境を整え、将来的に国を支えていく人材をシンガポール人の中でしっかり育てること、高齢者にはできるだけ健康でいてもらい、スキルを活かして少しでも長く戦力になってもらうこと、それでも足りない部分などはIT化の推進で補っていくこと―この3点がうまく噛み合い、国力の維持が図れるようにしようと取り組んでいるのです。

 

シンガポールでビジネスを展開している我々は、そういった点を含めてこの国が目指しているものを理解する必要があります。その上で日本人だけでなく、シンガポールの人々のために何ができるかを考えなければならないでしょう。弊紙も日本語メディアとして、より多くの方がシンガポールへの理解を深めるきっかけになる情報を提供できるよう、ますます努力していきたいと考えています。少々早めですが、皆さまどうぞ良いお年を。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.328(2017年12月1日発行)」に掲載されたものです。

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