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社説「島伝い」

2017年8月25日

未来のために今やるべきこと

シンガポールの建国記念日である8月9日に先立って、リー・シェンロン首相の国民向けメッセージが8月8日に発表されました。8月下旬の建国記念日大会での首相スピーチと合わせて、毎年多くの国民が注目しています。今回リー首相は、将来に備えるために取り組むべきポイントとして3点挙げました。

 

1点目は就学前教育。施設数を増やし、質を上げることに加えて、教師職のアップグレードが明言されました。国として取り組むことで、良い人材が集まることや、将来にわたって良い教師であり続けてもらうためのシステムの整備などが期待できそうです。

 

2点目は、日本でも生活習慣病の一つとして長年問題になっている糖尿病。60歳以上のシンガポール国民のおよそ3分の1が糖尿病患者であるという数値の高さにも驚かされます。確かに、ホーカーセンターなどでの食事ばかりでは野菜不足になりがち。しかし、野菜を積極的に摂取できるか、バランスの良い食事をとれるかどうかは結局本人次第。一人ひとりの意識を変えて、国民をより健康志向にするための施策が今後展開されるでしょう。

 

3点目はスマート国家。既にあらゆるところでIT化が進んでいるシンガポールですが、より一層推進しようとしているようです。かつて三菱重工業が開発した自動料金収受システムは、シンガポールでERP(Electronic Road Pricing)として日本よりも3年ほど早く一般利用が開始されました。コンパクトな国家だからこそ最新技術の導入や普及も進めやすく、「日本にはまだないシステム」がこれからも度々見られそうです。

 

これらの3点は一見バラバラですが、いずれもその背景に、近い将来必ず到来する少子高齢化社会へ備えようとする国の姿勢が見えてきます。ベビーボーナスなどの少子化対策は既に実施されていますが、生まれた子供が労働力として社会で活躍するまでには長い年月が必要。その間に、子供の数を大きく上回る勢いで高齢者が増えることは疑いのないことです。若年期からの糖尿病対策で、現在の現役世代が高齢になっても健康であり続ければ、少子高齢化による労働力不足が懸念される中、貴重な戦力にもなり得ます。それでも足りない分はスマート国家推進で効率化を図って補い、シンガポールの将来を担う子供達には幼い頃から質の高い教育を受けられる環境を整える―いずれも、今のシンガポールだけでなく、未来を見据えたものです。

 

リー首相のメッセージは、国民へ直接語りかける形で分かりやすく、国の方向性がしっかり伝えられています。首相府ウェブサイト(www.pmo.gov.sg)でぜひ視聴してみてください。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.325(2017年9月1日発行)」に掲載されたものです。

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