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社説「島伝い」

2017年4月25日

期待を持たせる国

シンガポールの運輸省が「空を飛ぶタクシー(aerial taxi)」を計画、2030年までの実現を目指していることが先日明らかになり、ニュースなどでも話題になりました。皆さんの反応はいかがだったでしょうか。有人ドローンの開発が進んでいるとはいえ、実際の運用を考えると難しいという見方でしょうか。あるいは、驚きながらも「ぜひ実現してほしい」という期待でしょうか。

 

この計画は、地元紙ビジネス・タイムズが3月22日に開催した「リーダーズ・フォーラム」においてパン・キンキョン運輸次官が語ったものです。パン氏によると2030年までには、小型の自律運転機器(driverless pod)で会社に行き、終業後は自転車でジムに行き、帰宅には空飛ぶタクシーを使う、といった生活も可能だろうとのこと。かなり具体的な例が挙げられていることからも、「空を飛ぶタクシー」は夢物語などではなく、シンガポール政府が本格的に実現を目指していることが伺えます。国土が限られているシンガポールでは渋滞による交通マヒは致命的。従来から国内の登録車両台数はもちろん、マレーシアから入国する車の数がむやみに増えることの無いようコントロールしてきました。空間を利用した交通機関が実現できれば、その恩恵を最も享受するであろう国とも言えます。

 

一方、同じような計画がもし日本で発表されたら、13年後の2030年までの実現を目指すという話にはおそらく懐疑的な見方が多くなるでしょう。1973年11月に決定された整備新幹線計画を見ても、40年以上経った現在、全線開業は東北、九州・鹿児島ルートの2路線、北海道、北陸、九州・長崎ルートの3路線は一部開業で、未着工区間もあります。もちろん、シンガポールで「空を飛ぶタクシー」を計画することと同列で論じることはできませんが、やはり交通機関の整備には長い年月がかかり、計画通りに進めるのは容易ではありません。技術的に可能であったとしても、実現するのは難しいだろう、とつい後ろ向きに考えてしまいがちです。

 

しかし、シンガポールでの話であれば「本当に実現できるかも」と素直に思い、実現するには何が必要だろうと、我々を前向きに考えさせるものがどうやらあるようです。人々に期待を持たせることができるシンガポールという国がこれからどのような方向に進むのか、それを見ながら自分達の生活やビジネスに何か結びつくことがないかと考えることで、我々もまた新たな気づきやきっかけを得られるのではないでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.321(2017年5月1日発行)」に掲載されたものです。

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