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社説「島伝い」

2007年7月16日

退社しました

所用である日本の会社に電話をかけた時のこと。あいにく相手先の方が不在とのことでしたので、戻られたら折返しお電話を頂けるよう伝言をお願いしました。自分の名前と会社名、電話番号を伝えた後に、「失礼ですが……」と問いかけたところ、電話口の方が慌てた口調で返答されました。「いえ、失礼ありません。」

 
別の日のこと。「○○さんいらっしゃいますか?」と尋ねたところ「○○は退社しました。」夕方前でしたので、今日は早めに帰られたのかと思い、自分の名前と会社名を改めて名乗った上で、以前お取引させて頂いた者です、かくかくしかじか、こういう事情で至急ご連絡したいことがあってお電話しました、何とかすぐに連絡が付く方法はないでしょうか、とひと通り話し終えたところで、電話口の方がつぶやくように言いました。「○○は辞めたんですけど。」

 
最初のケースは「私○○と申します」と答えるのが普通、その前に「申し遅れました」と付けられれば上級。2番目のケースは「○○は先月末で退社いたしました。」のように時期を付け加えれば済む話で、「○○の後任の者におつなぎしましょうか?」と言えれば上級――などというのはもはや古い常識なのだろうか、と思わず考え込んでしまいました。

 
「その日は私のご都合が悪くて…」と自分に尊敬語を使ってしまったり、「資料は拝見されましたか?」と相手をへりくだらせてしまったり、敬語の誤用も多いものですが、ビジネスでコミュニケーションを円滑に進めるためにも、場面に相応しい言葉遣いができることはやはり重要です。日頃から自分の言葉遣いに留意し、正しく身につけておく必要があります。

 
日々の忙しさの中では、言葉遣いへの細かい配慮などもつい欠けてしまいがちですが、それで相手の心証を悪くしてしまっては、まとまる話もまとまらなくなってしまいます。どんなに立て込んだスケジュールでも、合間で息抜きや気分転換の時間を自分で作り、ちょっとした配慮ができる心のゆとりを常に失わないようにすることが、結局自分も相手も快適でいられるための早道なのかもしれません。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.102(2007年07月16日発行)」に掲載されたものです。

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