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社説「島伝い」

2007年8月20日

多様性がもたらすもの

米国の住宅ローン問題に端を発した株安でやや水を差された感があるとはいえ、各企業から次々と発表されている上半期や第2四半期の業績、シンガポール証券取引所上場企業の株価の推移、シンガポールへの外国投資の増加を見ても、シンガポール経済はやはり底堅いといえます。建国から40年余りで急速に発展を遂げ、ここまで信頼性の高い経済力を付けることができたのは何故でしょうか。

 
シンガポールが多民族国家であることは周知のとおりですが、外国人の受け入れに関してもかなり寛容で、就労可能なビザであるエンプロイメント・パス(EP)の取得も他の先進国に比べて容易です。また、企業にとっても、事業を展開する上でシンガポールは魅力的な国のひとつになっています。アジアをターゲットにした場合の地理的条件の良さや、2007年度の税制改革で法人税が20%から18%に下げられたことはもちろん、弊紙93号(2007年3月5日発行)掲載の無料ビジネスサポートサービスで取り上げられた「汚職行為法」にも見られるように、政府が主導して公正でクリーンなビジネス環境作りを推進してきていますし、法的手続きなどの迅速さも目を見張るものがあります。さらに、外国人であっても、起業家パスを取得してシンガポールで会社を立ち上げ、ビジネスプランを実現できる道が用意されています。新しいことへ挑戦するためのチャンスを、シンガポール国民はもちろん外国人に対しても広く与えることで、様々なアイディアや技術を外部から取り入れてきたことは、資源や地場産業がほとんどない状態で独立した国としてそうせざるを得なかったとはいえ、今ではシンガポールの大きな強みとなっています。

 
一方、日本でも様々な面で門戸開放の必要性が言われ続けていますが、まだまだ十分とはいえません。7月末の参議院選挙では様々なスキャンダルや騒動が噴出し、安倍政権大敗という結果になりましたが、シンガポールの今日の姿を見るにつけ、いかなる政党が政権を担うにせよ、日本も多様な考えや知識を外部から取り込むことで、国全体の底上げを図れるような方向へ向ってほしいと願うばかりです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.104(2007年08月20日発行)」に掲載されたものです。

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