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社説「島伝い」

2007年11月5日

ファースト・ラベル

「ファースト・ラベル」と言っても、ワインの話ではありません。最近日本で話題になっている『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書)の著者、岡田斗司夫氏がいうファースト・ラベルとは、「ある時代でもっともメジャーな価値観にそった格付け情報」のことで、学歴や家柄、職業、見た目、実績など人が持つさまざまな看板の中でも「一番上の看板」という意味。岡田氏も同書で述べていますが、日本では、ファースト・ラベルは長らく「家柄」でした。それが明治中期以降「学歴」に変わり、日常の小さなことから就職や結婚においても重要なポイントでした。

 
やがてバブル経済とITバブルという2つのバブルの崩壊を経て、「学歴」もファースト・ラベルの地位から転落。高学歴・一流企業のサラリーマンより、Tシャツにジーパン姿でフェラーリを乗り回す若手IT企業社長などがもてはやされるようになりました。高収入、高級服、高級車といった「ブランド」がファースト・ラベルになったのです。もっとも、この傾向も「2007年現在終焉しつつある」と岡田氏。

 
そして今ファースト・ラベルは「見た目」。岡田氏は「かつては『彼は東大生。でもデブ。ちょっと残念』だったのが、『彼はデブ。東大生なのに。論外』となる」と言い表しています。ビジネスにおいても、手書きの提案書など今ではほぼ皆無、プレゼンツールで視覚的にきれいに作成された提案書の方が読んでもらえる確率が高いとされます。情報過多な現代のビジネス環境においてより効率的に仕事を進めるためには、装着せざるを得ないフィルターなのかも知れません。

 
岡田氏は、1年前までと比べて体重50キロ減の現在、仕事に対する周囲の評価が大きく変わり、過去の仕事も再評価されるようになったのを実感するそうです。氏のファースト・ラベルが「デブ」じゃなくなっただけで、それだけ変わるということでしょう。「見た目」が今まで以上に重要な訳で、自社の取扱商品や自分自身のファースト・ラベル、つまり「見た目」を一度客観的に見直してみた方が良いのかもしれません。逆に、他社の商品や、人に対して、ファースト・ラベルだけが判断根拠になってしまわないよう、気をつけることも大事でしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.109(2007年11月05日発行)」に掲載されたものです。

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