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社説「島伝い」

2008年8月18日

鬼だらけの月?旧暦七月

シンガポールでは毎年8月頃、夕刻に道端のあちこちで火を焚いて紙片を燃やす人達の姿をよく目にします。その傍らには果物や菓子が供えられ、線香の煙が立ち込めています。旧暦七月は中華圏では鬼月(ゴーストマンス)、地獄の門が開いて「鬼」がこの世に帰ってくる月です。ちなみに、中国語で「鬼」は死者の霊魂のこと。日本でも、自分の祖先の霊を迎えるために盆の入りに迎え火を焚いたりしますが、中華圏では、自分の祖先を迎えるためと、身寄りが無くてさまよう飢えた霊(餓鬼、ハングリーゴースト)をなだめるために、地獄で使えるとされる紙幣を燃やし、家の外に食べ物を供えます。

 
また、この時期は、大きなテントの下で人が大勢集まっている賑やかな光景もよく見かけます。「ハングリー・ゴースト・フェスティバル」と呼ばれる大夕食会で、同じ地方をルーツとする人達や親族同士、ご近所同士などが集まって催されます。テントの一角には食べ物や線香が供えられた祭壇が設けられ、大勢で食事を楽しんだり、粤劇(広東オペラ)などの中国劇や、各自持ち寄った物で行うオークションに興じます。

 
今年は8月1日から始まった鬼月、この期間は中華系シンガポール人の多くが不動産や車の購入、結婚、旅行など大きな買い物や決断を控えます。若い世代も「迷信なんだけど」と言いつつ、敢えて反することは少ないようです。ところが、中国ではちょっと様子が違うようで、8月1日付地元紙ストレーツ・タイムズによると、2008年8月8日は縁起の良い「八」が3つも並ぶおめでたい日、と、その日にあわせて結婚したカップルが北京だけでも8,000組以上いたとのこと。一方、シンガポールでは鬼月真っ只中のこの日に結婚したカップルはあまりいなかったようです。むしろ、旧暦8月15日にあたる9月14日の方が「八」月でかつ月の第15日目という縁起の良い日に重なることから、結婚披露宴の予約でいっぱいのホテルもあるとのこと。

 
日本文化のルーツでもある中華文化が、文化大革命を経て道教的な風習も薄れている中国よりむしろ色濃く見られるのも、シンガポールの面白さのひとつでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.128(2008年08月18日発行)」に掲載されたものです。

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