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社説「島伝い」

2009年3月2日

景気の悪化と行動

2009年が始まってはや2ヵ月が過ぎましたが、特に今年に入ってから「景気が悪い」という話を頻繁に耳にします。また、ここ数年はあまり聞かなかったような話も出るようになりました。売掛金の回収ペースが去年までと比べて落ちている、業界内の紳士協定が平気で破られ、なりふり構わず利を得ようとする動きが出ていて業界を混乱させ始めている、曲解としか言いようのない解釈で契約を反故にしようとする――景気の悪化とともに、ビジネスにおける行動が悪化し、ビジネスルールの崩壊が起き始めているようです。

 
最近、ある企業が経営不振で営業を停止せざるを得なくなり、経営者が夜逃げ同然で雲隠れしてしまった、というニュースが地元紙で報じられていました。その企業が提供していたサービスを受けるため、何千ドルという個人にとっては大金を既に払っていた人達が何人もいて、サービスを受けられない分の払い戻しを求めているのですが、肝心の相手が行方不明で困惑している、という内容でした。

 
サービスの提供内容や提供期間、そのサービスへの対価として支払う金額、支払方法などの条件は、通常「契約」という形にまとめられ、当事者間で取り交わされます。その内容を書面で記したものが「契約書」です。くだんの企業と、サービスを受ける側の人達との間にも何らかの契約が取り交わされていたはずですが、企業側は契約不履行というルール違反を侵し、その果たすべき責任を放棄してしまいました。

 
それぞれの企業にはそれぞれの事情があり、内部の人間にしかわからないこともたくさんあるでしょう。しかし、いかなる事情があったにせよ、企業として果たすべき責任を放棄することは許されません。また、このような一企業の誤った行動が、その企業と同じ地域にある他の企業、あるいは同じ国籍の企業の評判や信用を傷つけることもあります。

 
厳しいビジネス環境にある時こそ基本に立ち返って果たすべき責任をきちんと果たし、会社や自分自身の土台を揺るがすことがないようにしたいものです。

 
(千住)

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.140(2009年03月02日発行)」に掲載されたものです。

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