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社説「島伝い」

2009年8月3日

看板に期待するもの

日本でおなじみのレストランチェーン店や有名店のシンガポール出店が相次いでいます。日本でお気に入りだったお店の名前を聞くだけで懐かしくなり、開店したと聞いてすぐに足を運んだ方も多いのではないでしょうか。

 
海外に住む身としてこれらのお店に期待するのは、やはり本場と同じ手間ひまをかけて作られた、こだわりの味。食材も水も全然異なる土地でかなり無理な要求なのかもしれませんが、日本で見ていたなじみの看板、同じメニューの写真などを見れば、つい期待が高くなってしまいます。それだけに、想像とはあまりにもかけ離れたものが出てくると、落胆も大きくなります。

 
かつては、海外では日本米を味わう事も新鮮な刺身を楽しむ事もなかなか難しく、日本からの食材に入っていた防腐剤に当たってお腹の調子が悪くなった、といった話を聞くこともありました。現在は流通ルートの発達や、食品輸送技術の向上、食料輸入事情の変化などにより、日本産の新鮮な食材がシンガポールでも入手しやすくなりました。ここ10年ほどで日本食レストランの数もずいぶん増え、そういったレストランの努力もあって日本食はシンガポールで広く受け入れられています。寿司、天ぷらといった典型的なメニューだけでなく、照り焼き、とんかつといったメニューも人気を得ています。さらに近年は日本へ旅行に行く人も増え、日本で本場の味を知って好きになったという人も多くいます。

 
客の多くを占める地元の人達の好みに合わせたメニューをアレンジすることも大事ですが、これから海外に進出するレストラン、特に日本人になじみ深いお店については、日本と変わらぬこだわりと手間ひまをかけた味で、看板を裏切ることのないよう、海外で頑張っている日本人の活力となるような食の提供を期待したいものです。また、そういったこだわりの味をシンガポールの人達に食べてもらうことで、食文化としての日本食の本質やその良さを知ってもらうことも大事なのではないでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.150(2009年08月03日発行)」に掲載されたものです。

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