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社説「島伝い」

2009年9月7日

本質は何か?

先月の衆議院総選挙は、民主党が300議席以上を獲得し大勝しました。小泉政権下で「郵政選挙」と呼ばれた前回(2005年9月)の総選挙では、与党である自民党と公明党が圧勝しましたが、今回はまったく対照的な結果でした。

 
「郵政選挙」の翌年、2006年9月に自民党総裁としての任期満了に伴って小泉元首相が退任した後、ここ3年ほどの日本は9月になると首相が交代している状態。この過程で、国民が離れて行ったことは否めないでしょう。さらに、今回の選挙では民主党のマニュフェストを批判する冊子の配布や、インターネット上で公開されたアニメCMなど、自民党が展開したネガティブ・キャンペーンも支持を集めるどころか逆に支持を失う事につながったようです。

 
今回の民主党圧勝により、政権交代が現実のものとなる見通しです。民主党の支持者がこの4年で増えたというより、国の現状が変わる事を期待した人達の多くが現与党以外の政党を選んだということでしょうが、民主党が7月末に公表したマニュフェストはいわば有権者に対する約束。やると言ったことは必ずやる「有言実行」であってほしいものです。

 
海外に住んでいると、世界の中で日本の存在感がどんどん希薄化していることを実感します。今回の政権交代で、世界が見ているのはあくまでも日本という国。次期政権にはその事を意識して、前政権とは違う行動をという決め方ではなく、日本がどうあるべきか、どの方向に進んでいくべきかというビジョンを明確に示して、そのビジョンを元にした行動が期待されます。

 
総選挙で大敗を喫した自民党も、次期与党に対抗するのではなく、日本という国を良くしていくために何をしなければならないかを基本に行動してもらいたいものです。「日本はこのままではだめだ」と危機感を募らせている国民の期待を裏切る事になれば、政治不信は増すばかり。今回の選挙結果は、国が変わることへの国民の期待の表れであるということを、政治家を名乗る方々にはしっかり受け止めてほしいと思います。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.152(2009年09月07日発行)」に掲載されたものです。

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