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社説「島伝い」

2009年12月7日

政権交代

『現代用語の基礎知識』が選ぶ新語・流行語大賞で、「政権交代」が今年の年間大賞に選ばれました。8月末に実施された衆議院総選挙で民主党が「政権交代」を掲げていたのをはじめ、相撲界ではここ数年「平成の大横綱」と称された朝青龍から白鵬への「政権交代」がいわれ、さらに先月末、世界ボクシング評議会(WBC)フライ級新王者となった亀田興毅が、元王者内藤大助への挑戦を発表した際に「政権交代」ということばで挑発するなど、政界以外のところでもよく聞かれました。
新しい勢いのある力が台頭し、従来のトップに取って代わることはある意味当然の流れでしょう。スポーツの世界などでは良くあることです。しかし、「政権交代」とは、単に新しい人がトップになるというだけではありません。これまでに築き上げられてきたものを引き継ぎ、さらにレベルアップするチャンスでもあるということを、よく考える必要があります。
トップから降りた側は、もう関係ない、あるいはもう引退するべきだ、と考えてしまうのではなく、再びトップに戻れる力を付ける努力をすべきでしょう。降りたからこそ見えることもあるはずです。新しいトップを闇雲に批判したりあら探しをするのではなく、新しいトップの良いところを認めて、自分たちが次にトップになるためには何をするべきか、考える必要があります。負けをどう受け止めて次のステップに進むか。その努力が全体のレベルを押し上げることにもなります。
自民党政権が長年続いて一般人の政治への関心の低さが問題視されてきましたが、民主党が政権交代を実現したことで政治への関心も高まりました。とかくその言動が批判される亀田家ですが、彼らが登場してからボクシング界もこれまでになく注目されています。相撲でも朝青龍が一人勝ちを続けていた頃はファン離れが言われていましたが、白鵬という強力なライバルが現れ、二人が高いレベルで競い合うことで相撲界にも活気が戻ってきています。
私たちも、「政権交代」だけでなくその次に何が起きるのか、関心を持ち続けることが大事なのでないでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.158(2009年12月07日発行)」に掲載されたものです。

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