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社説「島伝い」

2010年2月1日

軸がぶれないサービスを

前号のシンガポール・トピックでも取り上げましたが、ヤマト運輸が宅急便サービスをシンガポールで開始しました。配達のサービス自体は以前からシンガポールにももちろんありましたが、小型の荷物を戸口から戸口へ届けるという日本の宅配便スタイルはこれまでにはなかったサービス。きめ細かな時間帯指定が可能で、再配達に何度でも足を運んでもらえたり、生鮮食品などは冷蔵・冷凍車が届けてくれる、といったそのサービス内容は、日本ではすっかりおなじみですが、ローカルの人々にはやはり驚きだったようです。

 
集荷や配達を担当する運転手のことをヤマト運輸では「セールスドライバー」と呼んでいますが、それはシンガポールでも同じ。サービス開始前に何ヵ月もかけてローカルのセールスドライバーに研修を行い、日本で提供しているサービスが彼らにも実践できるよう徹底を図ってきたそうです。

 
従来の配達サービスよりも格段に便利で優れているといっても過言ではない宅急便サービスは、利用者側に受け入れられるのはそれほど難しいことではないでしょう。もっと重要でかつ大変なのは、サービスの担い手であるセールスドライバーに、宅急便サービスの目指すものやその本質といった軸になる部分を理解してもらうこと。サービスの開始から約1ヵ月、今のところセールスドライバーの評判も上々で、彼ら自身、自分達が提供するサービスでお客さんが喜ぶのを目の当たりにして、宅急便サービスの良さを実感しているようです。

 
研修で言われたことやマニュアルに書いてあった日本式のサービスを押し付けられるのではなく、サービスの良さや本質を理解し、その実践者としての自覚を持つスタッフを育成することが、「日本のサービスの提供」という軸をぶらさずにサービスを確立し、継続していくためにはやはり大事でしょう。宅急便サービスの海外展開はシンガポール、上海でまだ始まったばかりですが、日本のソフトパワーが海外でビジネスチャンスを掴んでいく成功例のひとつとして、「TA-Q-BIN」の文字が世界中で見られるようになることを期待しています。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.161(2010年02月01日発行)」に掲載されたものです。

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