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社説「島伝い」

2010年4月19日

本気でやる気にする仕組み

4月14日付けの記事「アニメ映画の制作奨励、外国企業も助成対象」にあるように、メディア開発庁(MDA)から、アニメ映画の制作助成が発表されました。新たに基金が設立され、審査に通れば一作品で最大3億円余りが助成されます。シンガポールは近年様々な領域で海外に対して広く門戸を開いてきましたが、このアニメ映画制作助成でも地元企業が1社以上関わっている、制作工程はシンガポールで実施、といった条件さえクリアすれば、海外の企業も申請できます。地元の制作者が海外とコラボレーションすることで技術を学び、新しい流れができることが期待できますし、何よりアニメ映画制作に取り組む人達にとって大きなモチベーションになるでしょう。

 
日本にもアニメ映画制作に対する公的な助成金があります。助成対象経費2億円以上、上映時間1時間以上の長編アニメ映画で最大5,000万円です。また、日本の公的な助成金にはよくあることですが、当該年度内、つまり翌年3月末を期限とする指定期間内に完成試写の実施と作品提出が必要です。何らかの事情で3月31日までに完了する計画にできない場合や、計画に変更が発生して指定期間内に完成できない場合は助成金を受けられないことになります。

 
これらの話には、日系企業の海外展開で見られるものに通じるものを感じます。新興国市場でシェア獲得に日系企業が苦戦する中、中国や韓国の企業がここ数年でみるみる存在感を高めていますが、それは新興国市場に進出する企業と現地に飛び込んで働く人材の本気度の違いにあるように思います。ある中国企業は、インド市場で1年頑張って大きな成果を出せばその1年に対して2年あるいは3年分の報酬を出すことで会社の本気度を示し、やる気のある社員が必死で頑張る仕組みを持っています。能力や技術力、方法論などで決して劣っている訳ではないのに日系企業が苦戦している理由はそのあたりにもあるのではないでしょうか。

 
アニメ映画助成の話はシンガポールのトピックのひとつに過ぎませんが、日本に足りないものを考えるきっかけとして捉えることができそうです。

 

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.165(2010年04月19日発行)」に掲載されたものです。

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