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社説「島伝い」

2010年6月7日

初心に帰れ

普天間基地移設をめぐる混乱や「政治とカネ」の問題で政権への信頼低下を招いたことなどを理由に、6月2日午前、鳩山由紀夫首相が辞任を表明しました。同時に小沢一郎氏が民主党幹事長を退任することも発表されました。

 
普天間基地問題は、日米合意を覆せば着地点探しで困難を極めることは容易に予測されることでした。それを敢えて「最低でも県外」と公言し、米国大統領にも「自分を信じてほしい」とまで一国の首相として発言したことについては、鳩山氏自身はもちろん政権与党としての民主党、特に上層部にも猛省を促したいと思います。

 
昨年8月末の衆議院総選挙前に民主党が掲げたマニフェストには、今月から日本各地で支給が始まった子ども手当てや高校無償化、高速道路無料化、暫定税率廃止など、国民にとって耳障りの良い項目が含まれていましたが、有権者がマニフェスト全体を自分自身の目でどこまで見極めた上でその権限行使である投票に反映したか、その点も厳しく問われなければならないでしょう。

 
この号が発行される頃には民主党の新しい代表も決まり、新首相も判明していることでしょう。しかし、次の内閣総理大臣が任命されるまでは、鳩山氏は首相として事実上の解散権限を持っています。この際、その権限を行使して衆議院も解散してはどうでしょうか。解散・総選挙で国民の信を問うことは、福田氏や麻生氏が首相に就任した際にも民主党をはじめ各党も求めていたことです。

 
日本の現政治システムに行き詰まり感がある今こそ、政治経験の有無によらず有能な人材が無所属からでも国政を目指す絶好の機会となるでしょう。また、政治家を自認する方々には、選挙戦で自らの信念や政策方針を説き、有権者に納得してもらって票につなげるという行為を通じて、そもそもなぜ政治家になろうと思ったのか、今一度初心を思い出してもらいたいと思います。そこまでできれば、これからの日本にも希望が見出せるのではないでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.168(2010年06月07日発行)」に掲載されたものです。

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