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社説「島伝い」

2010年11月15日

周回遅れからでも表彰台を

羽田空港の国際線ターミナルがオープンして約2週間、海外から東京を訪れる人だけでなく、出迎える人にとっても、都内や神奈川方面からのアクセスの良さが好評のようです。しかし、オープン時点での就航航空会社数は20社で、成田空港や韓国・仁川空港の約3分の1、チャンギ空港の約4分の1。アジアの航空会社が多いのは良いのですが、中東や南米、ロシアはまだゼロで、ヨーロッパや北米も少ないことから手放しには喜べません。羽田空港は、24時間運行可能な国際空港として大きな可能性を持っていますが、韓国や東南アジアで既にハブを目指している国際空港からは出遅れているのが現状です。

 
シンガポールでは、日本人在住者数が90年代半ばのピーク時に比べれば減少しています。シンガポールの状況も大きく変わり、製造業などはよりコストの安いタイやインドネシア、ベトナムへ工場を移転するケースが増え、在星日系企業の業界別の分布も、在星日本人の内訳も大きく変わってきています。それでも、在星日本人が減り続けて居なくなることはまず無いでしょう。シンガポールは、ある程度の経験や学歴があれば就労ビザが取得しやすいこともあり、優秀な外国人が多数活躍しています。この受け入れ態勢がある限り、経済発展を遂げて今後成熟段階に入ってもシンガポールに優秀な人材や優良外国企業が集まってくる流れは途切れることがないでしょう。

 
一方、シンガポールに進出する日系企業にも最近変化が見られます。「日本市場は縮小していくばかりでこのままでは行き詰ってしまう」と、生き残るために日本以外の市場に出るという、「進出」というより「流出」が増えているように感じられます。

 
日本という国が今後生き残っていくためには、日本の良いものを「流出」させるだけでなく、外国の良いものを受け入れる体制を整えることが必要です。そういった流れを作る上で、羽田空港がハブ化に成功することは重要な要素のひとつでしょう。周回遅れであることを認識した上で、その遅れを取り戻してむしろリードできるような積極的かつ有効な策を国を挙げてしっかり打っていくことが求められます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.179(2010年11月15日発行)」に掲載されたものです。

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