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社説「島伝い」

2010年10月4日

まず自分の国を守れ

9月は尖閣諸島にこれまでになく注目が集まった月でした。尖閣諸島に近い日本領海内で、海上保安庁の巡視船の停船命令をきかないどころか衝突してきたとされる中国の漁船の船長が逮捕されたのが9月8日。中国側は、尖閣諸島は中国の領土と主張し、船長の即時無条件釈放を要求。日本側は国内法にのっとって対処するとし、19日には船長の拘留期限の延長が決定されました。その後、21日に温家宝首相が釈放しなければ更なる対抗処置を取る用意がある旨の発言を行い、ほどなく日本人4人が行方不明との報が入ったあたりから流れが急変。24日午後に突如船長の釈放が決定されました。菅首相、前原外相が21日からニューヨークで開催された国連総会出席のために渡米して不在だった間のことでした。

 
今回の日本側の一連の対応は、日本の外交戦略の甘さや弱腰ぶりを国際社会に印象付けてしまう形になりました。

 
中国側の主張や要求は理不尽なものであり、日本として到底受け入れられるものではありません。中国側には、レアアースやエネルギー資源の輸出制限、日本向け輸出品の抜き打ち検査の激増、円を買い進めることによる円高促進などといった日本への対抗措置を取ろうという動きも見られますが、今回の一連の行動に対して、日本は政府開発援助(ODA)や環境技術提供の即時中断で臨んでも良いのではないでしょうか。

 
中国の一般的な国民には、日本がODAという形で莫大な支援をしていることなどほとんど知られていません。中国は国という単位で見れば膨大な予算を軍事費にかけられる経済大国に既になっているのですから、支援はもはや不要でしょう。ODAの主な資金源は日本国民が納めた税金です。他国の支援をして良い顔ばかりするのではなく、日本国内の経済対策などにもっと使うべきではないでしょうか。

 
日本国民のため、日本という国を守るための行動が取れない政府は不要です。日本としての心構えをしっかり持って行動し、各国と積極的に外交政策を展開しながら日本が進むべき道を切り開ける政府であることを強く望みます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.176(2010年10月04日発行)」に掲載されたものです。

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