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社説「島伝い」

2011年6月20日

同じ言葉の安心感

今号8ページの記事「医師の20%は外国人、言語習得が鍵」は、シンガポールで働く外国人医師が、中国語やマレー語など、英語を理解しない住民の言葉の習得を目指しているというもの。言語習得は、患者との良好な関係構築の鍵と認識されているようです。患者の方も、外国人医師が慣れないながらも患者の母語で話しかければ、より安心して話しやすくなるようです。

 
シンガポール在住の日本人で普段英語で業務を遂行することに問題がない人でも、病気やけがの時には日本人や日本語が話せる医師に診てもらうのがやはり安心、と感じるようです。英語を話せても、医療関係の専門用語がわかるかどうかは別問題。まして、自分の体のことに関しては敏感になりがちです。英語での説明が良くわからないと悪い方へ考えて落ち込んでしまったり、何度もしつこく聞き返してしまいがちです。

 
日本では医師や看護師などの国籍に特に制限はありませんが、国家試験は日本語で行われるため、日本語を母語としない外国人にとってはやはり高いハードルです。経済連携協定(EPA)に基づいてインドネシアやフィリピンから来日した人達の看護師国家試験の今年の合格率は4%。昨年の1%よりは上昇しましたが依然低いままです。

 
日本の多くの患者にとっては、もちろん日本語が話せる看護師の方が安心ですが、ネイティブと同じ日本語力を求める今の制度には、再考の余地が十分にあると言えます。また、日本に在住する外国人のために、外国語が“ある程度”使える日本人の医師や看護師が増えることも、少子高齢化が進む日本で必要なことのひとつではないでしょうか。

 
医療技術が進歩して、どんなに良い治療薬が開発されても、医療行為は人が人に対して行うもの。病は気から、という言葉もあるように、病気やけがの症状そのものへの対応に加えて、患者の心の不安や負担を軽減することも大切です。患者とのコミュニケーションを重要視して、言語習得に努める外国人医師の存在は、人材が資源であるシンガポールにとっても大きな宝のひとつでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.192(2011年06月20日発行)」に掲載されたものです。

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