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社説「島伝い」

2011年8月22日

知らないことのリスク

ある人から、すぐ下の階の住人がヘビースモーカーで非常に困っている、とにかく迷惑だ、という不満を聞かされました。自分の家族が家の中でたばこを吸うのが嫌だというのであればまだしも、よその家のたばこ好きに迷惑しているとはどういうことかと思ったのですが、どうやら階下の住人はいつもベランダでたばこを吸っている模様。その煙が頻繁に上がってくるので、真上である自分の部屋はいつもたばこ臭くて窓が開けられず、洗濯物も干せない、ということでした。

 
階下の住人は、もしかしたら間接喫煙で家族に迷惑をかけないようにと気遣って、タバコを吸いたい時はわざわざベランダに出るように心がけているのかもしれません。一見家族思いに見える行動ですが、実は本人も預かり知らないところで他の人に迷惑をかけていた可能性があるわけです。シンガポールの場合、近隣の騒音など迷惑行為には迷わず警察へ通報するケースも多いので、場合によっては警察のご厄介になることも……。

 
日本では違法行為に当たらないことが、海外では違法になるケースもたくさんあります。飲酒運転に対する罰則が厳しいという意味では日本もシンガポールも同じですが、シンガポールの場合、駐車場内で車の鍵を持った人が酔った状態で車内に居ると、車を運転する意思があったとみなされ、エンジンが停止していても処罰の対象になります。同様のケースを罰する国は他にも増えているようです。「車の中で少し仮眠して、酔いを醒ましてから帰ろう」というのは、日本では「その方が安全ですね」で済む話ですが、他国ではそれで逮捕され、「知らなかった」では済まされない場合があるわけです。

 
自分の中では常識的な判断をしたつもりが、他人に嫌な思いをさせたり、ましてや犯罪者扱いにされるなど、誰も望んではいないでしょう。知らないことで発生するリスクを回避するには、日ごろから情報をキャッチし、より多くの情報の中から判断していくことが大事。変化の早いシンガポールという環境の中にいる我々には、必須スキルのひとつでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.195(2011年08月22日発行)」に掲載されたものです。

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