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社説「島伝い」

2011年9月5日

二つの選挙戦

8月末は日本とシンガポールで大きな選挙が実施されました。シンガポールで実施されたのは6年に1度の大統領選挙。1993年に民選大統領制になってから実質初めての選挙戦で、選挙委員会から立候補資格者と認定された4人が出馬しました。全員名字がタン氏だったことでも話題になりましたが、いずれも大統領にふさわしいと考えられる人物。最終的には元副首相のトニー・タン氏が僅差で選ばれました。これから先6年間、国家元首であるシンガポール大統領として国内での活動はもちろん、外交面でも各国との絆を深める大事な役割があり、多くの国民から今後の活躍が期待されています。

 
日本で実施されたのは民主党の総裁選ですが、現在与党である民主党の総裁は事実上次の日本の首相。1億2,000万人以上の国民のほとんどは直接投票しないとはいえ、日本という国にとっては重大な選挙でした。現与党は3年前に有権者全員が投票できる衆議院選挙で決まったのですから、そこに大きな時差があるとはいえ今回の総裁選に国民が関与していないと言ってしまうのも無責任でしょう。

 
今回民主党総裁選に出馬したのは5人。そのうち海江田氏は党内最大グループを率いる小沢氏の支持を受け、一方で前原氏は脱小沢を鮮明に打ち出していました。その間に位置していた野田氏が、決選投票での得票数で海江田氏を上回って民主党総裁に選出され、8月30日に衆議院、参議院で首班指名を受けて次期内閣総理大臣に決まりました。民主党の現状、つまり日本の政治の現状をあからさまに表した選挙戦でした。

 
日本国内でも「民主党は地位や名声にこだわって足の引っ張り合いばかりをしている」「5人の誰がなっても変わらない」などの批判が出ていましたが、その民主党を選んだのも国民であることを省みる必要があります。現在の体制のままでは何も変われないことは明らか。これまでの流れを大きく変えるいわば「破壊者」の存在が求められます。日本の政治を動かせる新たな人材を政界に取り入れることが必要でしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.196(2011年09月05日発行)」に掲載されたものです。

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