シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX社説「島伝い」TOP「国民を育てない会社に用はない」

社説「島伝い」

2016年4月18日

「国民を育てない会社に用はない」

3月24日に発表された2016年度シンガポール予算案を受けて、国会では今月6日から14日まで各省庁の予算について審議が行われました。その中で8日にリム・スイセイ人材開発相がスピーチを行い、シンガポール国民の雇用や人材育成に消極的な企業への対応について語ったことが、ニュースでも報じられました。

 

スピーチでは、今後長期的に労働力の増加率鈍化が見込まれる中で、経済成長を維持するために取り得る策が挙げられ、人材開発省として進めている様々な取り組みやその成果が説明されました。同省が今後目指すこととして再三強調されたのが、無駄のない人材活用やより一層の生産性向上と、経済活動においてシンガポール国民が中心的役割を担うこと。従来シンガポールは、能力のある外国人を積極的に呼び込みながらインフラ整備をはじめとする大規模事業を推進し、驚異的な経済発展を遂げてきました。外国人への就労パスの発行基準もかなり緩やかなものでしたが、2010年頃から厳格化の方向へ舵が切られています。そして今回のスピーチからも、自分達が中心となってこの国を発展させていく、という姿勢がより鮮明になりました。シンガポールで事業を展開している外国籍企業も、その方向性に合わせた考えや動きが今後求められることになるでしょう。

 

シンガポール人従業員の育成に不熱心で、シンガポールの経済や社会への貢献度が低い企業への監視を強めるという方針が示されましたが、リム人材開発相も言っているのは、同等の職務を担う人材に対しては国籍によらず待遇が公平で、人材育成にもしっかり取り組んでいる企業にはほとんど影響がないということ。日系企業でも、既にシンガポール人の優秀な人材を多数採用し、彼らの活躍によって業績を伸ばして、シンガポールの経済にも社会にも大きく貢献している企業が何社もあります。そういった事例に習いつつ、自社が今後シンガポールとともに発展していくためにも、再度社内の人員体制を見直し、将来有望なシンガポール人の積極的な採用や育成をこれまで以上に検討する必要がありそうです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.300(2016年4月18日発行)」に掲載されたものです。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX社説「島伝い」TOP「国民を育てない会社に用はない」