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社説「島伝い」

2012年3月5日

グローバル化の代償

先日一時帰国した時のこと。新しく開いた銀行口座のATMカードが破棄されていたことが判明しました。理由は書留で郵送されたATMカードを受けとれなかったため。海外在住で口座開設の際に届け出た住所には普段はいないので、代わりに銀行窓口で受け取れるようにできないのか尋ねてみたのですが、それはできない、住民票を日本へ移してくださいと言われるだけでした。

 
海外に長期滞在する場合、海外転出届を出すと日本での住民票が無くなる形になりますが、日本で住民票や印鑑証明書が必要な手続きが生じた場合、相当不便なことになります。在外公館で住民票の代わりとなる在留証明書や印鑑証明書の代わりとなる署名証明書などを取得することができますが、日本滞在中にそれらの書類が必要なことが判明した場合は、手続きをすべて棚上げして次の一時帰国まで待たねばなりません。書類がそろっても、書留で送られてくるような重要書類を受け取れるのは住民票記載の日本国内の住所でのみという場合、海外在住者には実質上手続き不可となってしまいます。日本国籍を持っていながら外国人扱いを受けているかのようで、憤りを感じてしまいます。

 
日本で「グローバル化」ということばが叫ばれて久しく、メディアなどでも海外で活動する日本人や日本企業が「グローバル人材」、「グローバル企業」ともてはやされているようですが、日本に住んでいれば何でもない手続きが海外在住というだけで非常にややこしくなったり、手続きそのものが取れなかったりと、不都合が多いのも事実です。

 
近頃、海外に居ながら国政選挙に参加できる在外選挙制度のことが盛んに宣伝されているのを見かけます。もちろん、海外に居ても参政権を持つ一国民として扱われるこの制度は大事なものですが、他に海外在住者への対応が遅れている部分が多々あることを考えると、日本のグローバル化はやはりまだまだ遅れていると言わざるを得ません。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.207(2012年03月05日発行)」に掲載されたものです。

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