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社説「島伝い」

2012年9月3日

棚上げ・先送りはいつまで?

今年4月に東京都が購入の意志を表明、その後7月に日本政府が購入・国有化の方向を明らかにし、8月には香港を拠点に活動するグループが上陸して逮捕されるなど、再び騒がしくなっている尖閣諸島。明治時代にある日本人が開拓するまでは定住者も無く、航行上の目印としての役割以上のものは無かったと思われる島々ですが、その領有権を台湾、中国がにわかに主張し始めたのが1970年代に入ったばかりの頃。1969年に出された国連・アジア極東経済委員会の東シナ海海底調査の報告書で、尖閣諸島周辺を含む海域が石油有望地域と評価されたすぐ後のことでした。

 
当時日本や中国が行った調査の結果、東シナ海海底の石油・天然ガス埋蔵量は石油換算で1,000億バレル以上と推定されていました。しかし、経済産業省より発表された90年代半ばの調査結果では、日中中間線の日本側での究極可採埋蔵量は5.18億キロリットル(約31億バレル)。東シナ海海底の資源量は期待されていたほどではないようです。

 
1972年の日中国交正常化、1978年の日中平和友好条約締結、1992年2月の尖閣諸島を中国領土とする規定が含まれた中国の「領海法」施行、2010年9月の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件など、これまでに尖閣諸島問題を日中両国が外交的に話し合うチャンスはありましたが、双方とも棚上げにしてきました。今回も、中国政府側が日本政府に対して現状維持を求める方針を内部決定、日本政府も日中間に領土問題は存在しないという立場上、中国側に冷静な対応を求める以上のことはない模様。これまでに先送りとしてきたことが、現在の両国間の緊張状態というリスクにつながっているにも関わらず、さらに放置することになります。ビジネスにおいても、後回しにしたことでリスクにつながった事例は枚挙にいとまがありません。決して良い結果を生むものではないことは明らかです。

 
日本政府には毅然とした対応が求められる一方、両国とも棚上げ・先送りを繰り返すことが本当に最善なのか、早晩再考が必要でしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.219(2012年09月03日発行)」に掲載されたものです。

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