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社説「島伝い」

2012年9月17日

シンガポールで働けなくなる?!

今号4ページの記事「PR取得者が減少、査証更新拒否も増加」にあるように、PR取得者が減少、また就労査証であるエンプロイメント・パス(EP)やSパスの更新不許可が増えています。昨年のEPおよびSパス申請のうち不許可は3割、そのうち3割近くは更新申請だったということです。日系企業をはじめ外国系の企業は、本国出身者をはじめ外国人を従業員に抱えている場合がほとんどなので、この状況は厳しいものがあります。

 
駐在員の場合はその給与水準などから更新申請で不許可というケースはあまり無いと考えられますが、更新申請で不許可になっているのはおそらくここ10年余りで大幅に増えた現地採用者。給与は業績や本人のパフォーマンスとも連動して決められるもので、就労査証を得るためだけに即座に上げるというわけにもいきません。企業としては戦力として必要な人材であるから更新手続きを取るわけですが、今後就労査証が更新できずにシンガポールから貴重な人材が流出するといった事態も懸念されます。

 
外国人居住者を規制する動きは、近年の物価の上昇や公共交通機関の混雑の原因は外国人の流入によるものが大きく、彼らが就労の機会も奪っている、といった国民からの不満の声に政府が対応し、数年前に始まりました。国として国民の利益を第一に守るのは当然ですが、この状況が続けば、外国人の力をうまく活用して国の成長につなげてきたシンガポールの良い部分が損なわれる恐れがあります。

 
昨年来、日本からシンガポールへの企業の進出が増加傾向にありますが、業務の中心となるはずの人材のEP申請がなかなか通らず、業務開始時期が当初予定よりも大幅に遅れるケースなどが既に出ています。これは当事者の企業だけでなく、シンガポールにとっての機会損失にもなりえるでしょう。これだけの理由で、日本からの企業の進出の流れに歯止めがかかることはおそらくありませんが、開けた国としてのシンガポールの良さは失ってほしくないというのが当地で活動する企業としての願いでもあります。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.220(2012年09月17日発行)」に掲載されたものです。

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