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社説「島伝い」

2012年10月1日

契約延長がもたらすもの

3ページのトップニュース「F1シンガポール・グランプリ、2017年まで開催で合意」にあるように、シンガポールでのF1レース開催の5年間延長が正式に決まりました。

 
延長の是非をめぐっては数年前から議論がありましたが、シンガポール政府も、延長については一貫して慎重な姿勢を崩しませんでした。しかし、11ページの記事「F1レース主催延長、ほとんどが歓迎」にもあるように、海外において、シンガポールGPを見てこの国に対する認識が変わった人々は相当数いるようです。投資や事業機会への関心にもつながっていることは、目に見えない経済効果といえます。F1観戦で実際にシンガポールを訪れた人には、成長著しく勢いのある都市国家として強い印象を与えているでしょう。契約延長で、シンガポールはさらに多くの人にその魅力をアピールする機会を手に入れました。F1レースのホスト国としてのノウハウも、過去5回の開催を通じて蓄積されてきていることがさまざまな面で見られます。

 
ただし、来年以降もこれまでと同じことを繰り返せば良いわけではありません。毎年出ている路面の凹凸の問題は、今年もまだ対応不十分と多くのドライバーが改善を求めていました。コンサートなどのエンターテインメント・プログラム終了後に、サーキットからの出口が大混雑して危険な状態になっていたことや、騒音についても、試験を控えて勉強中の子供たちへの影響を憂慮する声が出ていました。5年間冠スポンサーだったシングテルは、来年以降も継続するかまだ決めていません。

 
ただ、シンガポール国民の間でもF1に対する理解が深まり、年を追うごとに一般の人々の間でも関心が高まっているように感じられます。これまでは政府が強力なリーダーシップを発揮して開催してきた面がありましたが、より多くの国民が関わって国全体のイベントとして盛り上げるようになれば、さらに良いものになるでしょう。

 
5年かけて作り上げてきたものを基礎にして、次の5年でどのようなGPにしていくのか、シンガポールという国を世界にどうアピールしていくのか、来年以降も楽しみです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.221(2012年10月01日発行)」に掲載されたものです。

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