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社説「島伝い」

2012年11月5日

未来を担う人材の守り方

12ページの記事「子供向け不健康な食品・飲料の広告、来年から禁止」にもあるように、シンガポールでは、2014年より肥満などにつながりやすい食品・飲料の宣伝広告が禁止される見込みです。

 
肥満、とりわけ内臓脂肪型肥満は、高血圧、糖尿病、高脂血症、動脈硬化などの生活習慣病を引き起こす原因になることから、近年日本でもいわゆる「メタボ診断」が実施されていて、健康への悪影響が一段と問題視されています。また、欧米諸国だけでなく東南アジア各国でも肥満は社会問題になりつつあります。いまや多くの地域でファストフード店があるのは当たり前で、菓子や糖分の多い飲料も大量に消費されています。

 
マレーシアでは、BMI肥満度指数の23ポイントを上回っている成人が2010年の調査で約6割にものぼっていました。マレーシア政府も対策として、ファストフードの宣伝広告の全面禁止や、酒・たばこと同じように税率を上げることなどを検討。昨年には児童の肥満防止のために学校の食堂や売店で販売できる食品を規制するガイドラインの検討を発表しました。その中に「ナシレマは週2回のみ販売を許可する」という方針が含まれていたことが波紋を呼んで、ナシレマ販売業者などから見直しを求める声が上がり、結局、今年1月に発表されたガイドラインでは、販売の際の量とカロリーが制限されるだけにとどまりました。

 
一方、シンガポールの広告禁止という決定は、かなり強力なものです。禁止対象となる業界からの反発は必至と考えられますが、それでもこの決定を下したのは、やはり人材を国の貴重な資源とシンガポール政府が捉えているからでしょう。国民の健康を守ろうとする姿勢がはっきり打ち出されています。

 
仮に日本で「子供たちの健康を守るために、肥満につながりやすい食品や飲料の広告は禁止しよう」という話が出たら果たしてどうなるでしょうか。想像してみると、シンガポールをここまで発展させることに成功した政府の決断の早さが一層鮮やかに見えます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.223(2012年11月05日発行)」に掲載されたものです。

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