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社説「島伝い」

2013年1月21日

和ではなく積の形に

1956年に派遣された第1次南極観測隊で副隊長兼越冬隊長を務めた西堀栄三郎氏のことばで「同じ性格の人たちが一致団結しても、その力は和の形でしか増やせない。異なる性格の人たちが団結すれば積の形で大きくなる」というのがあるそうです。西堀氏は無機化学者として京都大学で教授も務め、技術者として戦時中の物資が乏しい中でも大量生産可能な真空管を開発したり、戦後は統計的品質管理手法を日本の産業界に持ち込んだ人物。また、学生時代から登山家としても活躍しました。

 
先のことばは、多才な西堀氏が「物作りの基は人作りにある」という考えを基本として、品質管理を極めるなかで見出したものだそうですが、海外在住者にとっても示唆に富んでいるのではないでしょうか。「同じ性格の人たち」を「同じ国籍・人種の人たち」と置き換え、「異なる性格の人たち」を「異なる国籍・人種の人たち」と置き換えても、同じことが言えそうです。

 
ここ数年、日本からシンガポールへ進出する企業が多いということは本欄でも幾度か触れましたが、実際にシンガポールで業務を進める中で、日本とは勝手が違うことに戸惑い、予定通りに物事が進まず行き詰まり感やいら立ちを感じている方も多いでしょう。

 
海外では、日本よりもはるかにバラエティに富んだ「いろんな人」がいます。育った環境、考え方、性格も違い、日本で仕事をする時のようには見通しも利きません。例えば、日本であれば誰に教えられずとも分かる年間を通した市場の流れも、海外では調べなければもちろんわかりません。しかし、見通しが利かなくてやりづらい、とマイナスに捉えるより、違いがあるからこそ新しいものが生まれるきっかけになるかもしれない、と捉えることができれば、「和の形」を「積の形」にしてより大きなものを得ることができるのではないでしょうか。

 
海外だからこそ「積の形」での成長のチャンスもより多くあるはず。2013年という新たな年を迎えましたが、今年試みることのひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.227(2013年01月21日発行)」に掲載されたものです。

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